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3月1日(火)
▼ 今月でアメリカ留学が終わる。いよいよだ。でも忙しくて感慨にふけっている場合ではないんだろうなあ、残りの3週間半は。。。 とりあえず音楽会の予定はたくさん入れた。こればかりは外せない。
▼ 一日ずっと論文用のデータ整理と図作り。まだまだ掛かりそう。
▼ 今日はビッグニュースがあった。ついにRafaがハワード・ヒューズ財団から多額のグラント(Howard Hughes Grant)を勝ち取った。億単位の金が動く。これで名実ともにYuste研も一流の仲間入りだ。私は直接の恩恵は受けないがとても嬉しい。
▼ 夜はリンカーンセンターにあるメトロポリタン歌劇場へ。今日はサンサーンス作曲のオペラ「サムソンとデリラ」。歌手はデニス・グレイヴス(Denyce Graves)とホセ・クーラ(Jose Cura)。遅刻したので観たのは2幕からなんだけど、なかなか楽しめた。ちなみにホセ・クーラは初めて観たけど容姿がかっこいい。
▼ 帰宅後はTY君の論文のリバイズ。
PNAS Single-neuron responses and neuronal decisions in a vernier task Ying Zhang and R. Clay Reid
MCN Neuronal activity regulates the developmental expression and subcellular localization of cortical BDNF mRNA isoforms in vivo Padmanabhan Paranji Pattabiraman, ... and Luciano Domenici


3月2日(水)
▼ 午前、実験。不可抗力のハプニングがあってデータがとれず。残念。
▼ 午後は投稿論文のデータ解析&Fig作り。これで3つ完成。
▼ 夜はメトへ。今日はヴェルディーの「ナブッコ」。このオペラを全曲通して聴くのは初めてなんだけど、ヴェルディーの出世作になった作品なだけあって、鮮やかなメロディーと合唱が魅力的なオペラだった。第3幕の「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って(通称:きんつば)」はちょー有名なんだけど、なんとアンコールされた。こんなのメトでは初めての経験だ。調べてみたらどうやらアンコールするのが習慣らしい。今夜の歌手ではマリア・グレギーナ(Maria Guleghina)がとりわけ有名かな。ちょっと歌い方が荒かったけど、演技や声量などはさすがに目を見張るものがあった。
▼ 帰宅後はTY君の論文改訂の続き。
▼ チリ出身のRobertoがチリ産のブドウをくれた。今の時期、NYのスーパーに並んでいるフルーツの多くはチリを初めとする南米から来ているんだそう。たしかに、いまチリの季節は北半球でいうところの9月。ブドウの収穫期に入った頃である。ワインのヌーボーも5月に出回る。
▼ ラボの皆に18日にパーティーをすることを改めてメールで正式に通知。
Nature Image segmentation and lightness perception BARTON L. ANDERSON AND JONATHAN WINAWER コンテクスから生じる明暗錯視について。今号の表紙はその例
Nature Quantum computing with realistically noisy devices E. KNILL 関係ない分野だけど興味あるのでとりあえず掲載。量子コンピューター。
Neuron Generation of Silent Synapses by Acute In Vivo Expression of CaMKIV and CREB Helene Marie, Wade Morishita, Xiang Yu, Nicole Calakos, and Robert C. Malenka
Neuron Dopaminergic Stimulation of Local Protein Synthesis Enhances Surface Expression of GluR1 and Synaptic Transmission in Hippocampal Neurons W. Bryan Smith, Shelley R. Starck, Richard W. Roberts, and Erin M. Schuman
Neuron Differential Encoding of Behavior and Spatial Context in Deep and Superficial Layers of the Neocortex Sara N. Burke, ... Bruce L. McNaughton
JN NMDA Receptor-Dependent Regulation of Axonal and Dendritic Branching Li-Jen Lee, Fu-Sun Lo, and Reha S. Erzurumlu
JN Spike-Frequency Adaptation Separates Transient Communication Signals from Background Oscillations Jan Benda, Andre Longtin, and Len Maler


3月3日(木)
▼ 日本ではひな祭り・・・のハズ
▼ 一日、論文の図作り。
▼ 夕方から買い物。
▼ その後はメトへ。これで3日連続だ。今夜の演目はヴェルディーの「ドン・カルロ」。今日はソンドラ・ラドヴァノフスキー(Sondra Radvanovsky)、ルチアーナ・ディンティーノ(Luciana D'Intino)、リチャード・マーギソン(Richard Margison)、ドウェイン・クロフト(Dwayne Croft)などの主役級から、さらに脇役まで皆レベルの高い歌唱を聴かせてくれた。とりわけ今日がメト初登場となったディンティーノ、彼女は私が聴いてきた中でもトップレベルのメゾソプラノである。また、やはり今日がメト・デビューのファビオ・ルイジ(Fabio Luisi)の指揮もこれまた見事なオケ・コントロールと解釈を見せ、華麗な舞台演出とあいまって、これまででもとりわけ素晴らしいメト体験となった。
▼ ただ一つ文句を言いたいのは「ドン・カルロ」の台本があまりにも舌足らずでチープなこと。なんで、ヴェルディーはこれに曲を付けようと思ったのだろうか。。。
TiNS Surface trafficking of receptors between synaptic and extrasynaptic membranes: and yet they do move! Antoine Triller and Daniel Choquet
H Statistical determinants of dendritic morphology in hippocampal pyramidal neurons: A hidden Markov model Alexei V. Samsonovich, Giorgio A. Ascoli
H Does hippocampus associate discontiguous events? Evidence from event-related fMRI Jing Luo, Kazuhisa Niki
H Characterizing multiple independent behavioral correlates of cell firing in freely moving animals Neil Burgess, Francesca Cacucci, Colin Lever, John O'Keefe
H Fundamental differences in spontaneous synaptic inhibition between deep and superficial layers of the rat entorhinal cortex Gavin L. Woodhall, Sarah J. Bailey, Sarah E. Thompson, D. Ieuan P. Evans, Roland S.G. Jones
H Failure to acquire new semantic knowledge in patients with large medial temporal lobe lesions Peter J. Bayley, Larry R. Squire
N Single cell analysis of activity-dependent cyclic AMP-responsive element-binding protein phosphorylation during long-lasting long-term potentiation in area CA1 of mature rat hippocampal-organotypic cultures J.K. Leutgeb, J.U. Frey and T. Behnisch


3月4日(金)
▼ 一日ずっと論文の図づくり。昨日に引き続き今日も諸々のプログラムなどを組んでは、データ解析をしながら図を作る。
▼ 夜はPCに計算を仕掛けて帰宅。
▼ 『実験医学』のゲラが届いたので校正をする。宮川先生が編纂された「行動を司る生命機能のメカニズム(仮題)」という特集に寄稿させていただいた。私の担当コーナーのタイトルは「大脳皮質に見る自発的な神経活動」。執筆者は無料ゲラを30部もらえるんだそう。
▼ 夜はRafa宅へ。ハワード・ヒューズ・グラントを取ったのでお祝いパーティーだ。いろいろな話題で盛り上がったけど飲みすぎてほとんど忘れた。とりあえずRafaに個人的に聞いたところ、ハワード・ヒューズは5年契約だそうで、更新は契約期間中に出した上位5つの論文で審査されるということ。コロンビア大学では神経科学の分野だけでも8つのラボがハワード・ヒューズ基金をもらっていてアメリカではトップなんだそうだ。Rafaにとって何より嬉しいのは、ここ最近は実務上、仕事内容の80%が研究に直接関係なかった(予算申請や授業など)のだが、この基金のおかげで雑務から解放され、研究に専念できるようになったということらしい。
▼ 新居の契約書が届いた。じっくりと目を通す。アメリカと日本のマンションで決定的な違いは“自己負担金”にある。たとえば電球や窓枠やトイレが壊れたらアメリカではすべて管理者が負担する(敷金も全額返ってくるのが普通)。日本ではこれらはすべて自己負担である。
▼ 帰宅したら先月ネット購入したエスプレッソメーカーがようやく届いていた。本当はそのデザイン性からECM社の「ボッチチェリ(Botticelli II T)」が欲しかったのだが、アメリカではどうしても入手しにくく、結局、同等機種のランチリオ(Rancilio)社「シルビア(Silvia)」、イソマック(Isomac)社「ヴィーナス(Venus)」、ガッジア(Gaggia)社「クラシック(Classic)」の3種の中から、日本でも修理が楽にできそうなランチリオ社のものを選んだ。ついでに同じ会社のグラインダー「ロッキー(Rocky)」も入手。早速、煎れてみる。最初の数回はただただ苦いコーヒーが出るなど上手くいかなかったが、試行を重ねて、それなりのエスプレッソが出せるようになった。豆の挽き具合がポイントみたい。もっともっと修行せねば。
▼ Robertoにスペイン語の単語「Bueno」と「Bien」の違いを訊く。一応、buenoは形容詞で、bienは副詞で、英語で言えば「Good」や「Well」の意味に相当するわけなんだけど、スペイン語ではちょっとニュアンスが違うらしい。ただ、どうも本人達にもその微妙な差を説明できないみたいだ。例を挙げてもらった。健康に関してはどちらの単語を使っても良い意味(元気ですの意)なんだけど、料理を指すときはbuenaというと良い意味になり(おいしいの意)、bienというと悪い意味になる(たとえば味が薄いとか)らしい。
Science How Visual Stimuli Activate Dopaminergic Neurons at Short Latency Eleanor Dommett, ... Peter Redgrave
NN Constant light desynchronizes mammalian clock neurons Hidenobu Ohta, Shin Yamazaki and Douglas G McMahon
NN Restoration of spatial working memory by genetic rescue of GluR-A-deficient mice W B Schmitt, R Sprengel, V Mack, R W Draft, P H Seeburg, R M J Deacon, J N P Rawlins and D M Bannerman
NN Preserved spatial memory after hippocampal lesions: effects of extensive experience in a complex environment Gordon Winocur, Morris Moscovitch, Stuart Fogel, R Shayna Rosenbaum and Melanie Sekeres 重要論文。海馬は空間情報を処理するのではなく、むしろ新しい情報をすでに獲得している情報に統合する役割があることを示唆している。
NN Intraglomerular inhibition: signaling mechanisms of an olfactory microcircuit Gabe J Murphy, Daniel P Darcy and Jeffry S Isaacson
NN Receptive field structure varies with layer in the primary visual cortex Luis M Martinez, Qingbo Wang, R Clay Reid, Cinthi Pillai, Jose-Manuel Alonso, Friedrich T Sommer and Judith A Hirsch
NN Multiple periods of functional ocular dominance plasticity in mouse visual cortex Yoshiaki Tagawa, Patrick O Kanold, Marta Majdan and Carla J Shatz
NN Local calcium transients regulate the spontaneous motility of dendritic filopodia Christian Lohmann, Alexei Finski and Tobias Bonhoeffer
N Induction of long-term potentiation leads to increased reliability of evoked neocortical spindles in vivo C.M. Werk, V.L. Harbour and C.A. Chapman
N N-methyl-d-aspartic acid-induced and Ca-dependent neuronal swelling and its retardation by brain-derived neurotrophic factor in the epileptic hippocampus M. Isokawa
N Ectopic action potential generation in cortical interneurons during synchronized GABA responses S. Keros and J.J. Hablitz
N Genetic background regulates semaphorin gene expression and epileptogenesis in mouse brain after kainic acid status epilepticus J. Yang, B. Houk, J. Shah, K.F. Hauser, Y. Luo, G. Smith, E. Schauwecker and G.N. Barnes
MC A Biological Network in Saccharomyces cerevisiae Prevents the Deleterious Effects of Endogenous Oxidative DNA Damage M.-E. Huang and R.D. Kolodner
CC Degradation of Signal Timing in Cortical Areas V1 and V2 of Senescent Monkeys Yongchang Wang, Yifeng Zhou, Yuanye Ma, and Audie G. Leventhal


3月5日(土)
▼ ちょっと二日酔い。早く目が覚める。
▼ 朝。昨日買ったエスプレッソメーカーでカプチーノを作ってみる。か〜なり旨い!
▼ 午前。TY君の論文改訂。
▼ 昼はムービングセールを求めて何人かが訪問してくれたが今日は買い手がつかず。
▼ 夕方から買い物。
▼ 夜はミッドタウンでパーティー。竹田夫妻と私たちがNYを離れるので“合同歓送会”を佐藤さんが企画してくれた。40人を超える日本人の友人らが集まってくれた。ほぼ同時期にNYに渡った生体異物の築地先生にNYで会ったのはじつは今日が初めて。あと、Yale大学からはなんと丹羽さんも駆けつけてくれた。とても嬉しい。


3月6日(日)
▼ 昨日と同じく、午前はTY君の論文、午後は買い物。
▼ そして夜は妻の友人宅で我々の歓送会。ワインはティニャネロ(Tignanello 2000)を持参。奥様は料理の先生とあってすべて手料理。イタリア料理。とてもおいしかった。


3月7日(月)
▼ なんだか暖かいなあと思ったら、なんと17℃まで気温が上がったらしい。ちなみに明日は−8℃で雪という予報が出ている。意味わからん。
▼ 一日、データ整理と図作り。週末中PCしかけておいた計算が終了していた。まずまずのデータだ。さらに解析を続けてひとつ図が完成。
▼ Neurosci ResのMethod論文のProofread。
▼ 夜はTY君の論文改訂。
▼ オンラインで毎日『New York Times』のトップ記事リストに目を通すようにしているのだけど、今日はちょっといつもとは毛色の違う記事が二つ載っていた。一つは薬の話し。米国ファイザー社が開発中の循環器疾患治療薬「トルセトラピブ(torcetrapib)」は多くの注目が集まる中、血圧が上昇するという副作用が見つかり、同社のベストセラー薬「リピトール(Lipitor)」(高コレステロール血症治療剤)とペアで処方という方針でFDAの承認申請するように軌道修正したらしい。もう一つは「ソニー(Sony)」の話し。「日本の会社が外人をCEOに迎えるのは意外だ」という書き出し。マックのiPODや韓国・中国ブランドの台頭などで天下のSonyもこのところ苦しかったのだろう。とはいうものの、人々の反応を見る限り、そのデザイン性のセンスの良さからソニーブランドの強さは、ここアメリカでも今もピカイチではある。
▼ 『魔法の発音 カタカナ英語』を読んだというバイリンガルの方から長〜いメールでコメントをいただく。とても勉強になった。次回の増刷時にその内容を丁寧に組み込みたいところ。
▼ 『進化しすぎた脳』─ 朝日新聞に香山リカさんの書評が載った。『潮』にも書評が載ったようだ。


3月8日(火)
▼ 昨日はコートなんて着て出かけたら暑いくらいだったが、今日はコートを着ていても寒い。予報どおりの豪雪だ。夜には-10℃にまで冷えたらしい。
▼ 今日一日はYusteラボの仕事をちょっと離れてTY君の論文改訂に専念。おかげで随分と捗った。Letterも書いたので、あとは最終チェックのみだ。
▼ 引越し用のダンボール箱が届いた。いよいよ帰国の準備せねば。
PNAS Coupling of the cortical hemodynamic response to cortical and thalamic neuronal activity Anna Devor, ... Anders M. Dale
PNAS Theta oscillations and sensorimotor performance Leslie M. Kay
TiNS Space matters: local and global dendritic Ca2+ compartmentalization in cortical interneurons Jesse H. Goldberg and Rafael Yuste Jesseの書いた総説。
TiNS Surface trafficking of receptors between synaptic and extrasynaptic membranes: and yet they do move! Antoine Triller and Daniel Choquet


3月9日(水)
▼ 朝、Rafaと論文について話をする。最近作った図をすべて見せたら。“Beautiful”と喜んでいた。素直に嬉しい。とりあえず私にはもう時間がないので、帰国までにResultを書くことを約束する。TitleやIntroductionはDiscussionの部分はRafaが手伝ってくれるそうだ。投稿雑誌はNeuron誌ということでお互いに最終合意。
▼ その後、まずはTY君の論文を少し手がけてAuthorとなっている学生たちに再送。そして、Rafaに指摘してもらったコメントを元に図を一部作り直す。
▼ 午後はMorganeからもらったデータ解析を始める。
▼ 夜は近くの「サラベス(Sarabeth)」や「ゼイバーズ(Zabar's)」でちょっとだけ買い物。
▼ 森山和道さんの「ネットサイエンス・インタビュー・メール」に深井朋樹先生が出られているということなので先日初めて登録してみた。過去のインタビュー記事も結構面白そうなのでいくつか遡って読もうかな。
Nature Sound of silence activates auditory cortex DAVID J. M. KRAEMER, C. NEIL MACRAE, ADAM E. GREEN & WILLIAM M. KELLEY 音楽を“想像”したときの聴覚野やブロードマン野の活動なんだけど、これって日本人でやると結構データがちがったりするような気もする。
Nature Spike-timing-dependent synaptic plasticity depends on dendritic location ROBERT C. FROEMKE, MU-MING POO & YANG DAN スパイクタイミング依存的なシナプス可塑性は樹状突起上の位置に依存する。図5のモデルの結果が面白い。
Nature Experimental one-way quantum computing P. WALTHER, K. J. RESCH, T. RUDOLPH, E. SCHENCK, H. WEINFURTER, V. VEDRAL, M. ASPELMEYER & A. ZEILINGER 量子情報科学:実験による一方向量子計算  深い意味はないけど掲載しておく。
JNS Structural Domains Involved in the Regulation of Transmitter Release by Synapsins Sabine Hilfiker, ... George J. Augustine, and Paul Greengard
JNS Sequential Development of Electrical and Chemical Synaptic Connections Generates a Specific Behavioral Circuit in the Leech Antonia Marin-Burgin, F. James Eisenhart, Serapio M. Baca, William B. Kristan, Jr, and Kathleen A. French
JNS The Slow Afterhyperpolarization in Hippocampal CA1 Neurons Covaries with Spatial Learning Ability in Aged Fisher 344 Rats Geoffrey C. Tombaugh, Wayne B. Rowe, and Gregory M. Rose
JNS Statistics of Decision Making in the Leech Elizabeth Garcia-Perez, Alberto Mazzoni, Davide Zoccolan, Hugh P. C. Robinson, and Vincent Torre


3月10日(木)
▼ 午前はCalhoun氏のTalk。bitplaneなどイメージングのテクニックについて。
▼ 午後はBrendonにfluo-4の実験についていろいろと説明する。
▼ 連日ムーヴィング・セールの品物を求める人がやってくる。部屋のものが大分減った。
上大岡トメさんが今月発行になるという新刊「しろのあお」を下さるとのこと。とっても楽しみだ。25日発売だから帰国してからかな。わくわく。
Cell Environmental Enrichment Reduces Aβ Levels and Amyloid Deposition in Transgenic Mice O. Lazarov, J. Robinson, Y.-P. Tang, I.S. Hairston, Z. Korade-Mirnics, V.M.-Y. Lee, L.B. Hersh, R.M. Sapolsky, K. Mirnics, and S.S. Sisodia アルツハイマー病 ネタ
Nature Essential role of TRPC channels in the guidance of nerve growth cones by brain-derived neurotrophic factor YAN LI, YI-CHANG JIA, KAI CUI, NING LI, ZAI-YU ZHENG, YI-ZHENG WANG & XIAO-BING YUAN AOPで出ていた。薬作にとっては重要な論文だ。
Nature Requirement of TRPC channels in netrin-1-induced chemotropic turning of nerve growth cones GORDON X. WANG AND MU-MING POO 同様。
Science Adaptive Coding of Reward Value by Dopamine Neurons Philippe N. Tobler, Christopher D. Fiorillo, and Wolfram Schultz


3月11日(金)
▼ 午前中はBrendonと話の続き。Fluo-4とOregon Greenのグリアの見分け方の差などについて話す。
▼ 午後はデータ解析。夕方からMidTownに買い物。姪へ絵本を何冊か。
▼ その後ラボに戻って、データを持ち帰り、解析を続ける。
▼ 夜はNeuroscience誌の論文の査読を開始。
▼ 実家に頼んで新居の電話を帰国と同時に開通してくれるよう契約してもらった。かのNTTが海外から掛けられる電話番号を持っていないなんて不思議だ。何はともあれ、電話番号が決まると諸手続きが楽になるので嬉しい。
▼ 朝、雪が降っていたが、大学に行くとRobertoが「今日は暖かいねえ」と声を掛けてくる。確かに悪くない天気ではある。取り立てて寒くない。気温も0℃前後くらいかな。
▼ そう、体感的な“寒さ”についていえば、NYと東京には決定的な違いが二つある。
▼ 一つはあまり風がないこと。東京の冬は強風の日が多く、気温以上に寒さが堪える。逆にNYは風があまり吹かず、かりに-10℃であっても、東京の冬から想像して「きっと寒いだろうなあ」と構えるほどには体感気温として寒くない。これが第一点目。
▼ もう一つは全館暖房にある。大抵どの建物でも全館暖房が入っている。このアパートも研究棟も室内はほぼ26℃に保たれている。こちらの方々は真冬でも室内では半袖で過ごす人が少なくない(私はそんなことはないが…)。そして外に出るときだけ分厚いコートを羽織る。実際それで十分なのだ。東京だと、全館暖房なんて普通はないから、たとえば寒い外を歩いて自宅や職場にようやく辿り着いても、まだくつろげない。そう、寒い部屋が待っているのだ。到着後真っ先にすることは暖房の電源を入れることだ。そして部屋が少しずつ暖まって、ようやく快適になる。ただ、部屋が暖まっても、たとえば廊下などは寒いまま。アメリカでは全館暖房だからオフィスの廊下もトイレへも半袖のままOKなのだ。
▼ というわけで仮に外気がNYのほうが冷たくても、東京のほうが“寒い生活”をしているのではないかと思う。
▼ 今週のF1000: PLoSB Highly nonrandom features of synaptic connectivity in local cortical circuits. Song S, Sjostrom PJ, Reigl M, Nelson S, Chklovskii DB
▼ 今週のF1000: EJN Sequential activation of p75 and TrkB is involved in dendritic development of subventricular zone-derived neuronal progenitors in vitro. Gascon E, Vutskits L, ..., Mas C, Kiss JZ
▼ 今週のF1000: Magn Reson Med In vivo visualization of Alzheimer's amyloid plaques by magnetic resonance imaging in transgenic mice without a contrast agent. Jack CR, Garwood M, ..., Grimm R, Poduslo JF
▼ 今週のF1000: JBC Clioquinol mediates copper uptake and counteracts copper efflux activities of the amyloid precursor protein of Alzheimer's disease. Treiber C, Simons A, ..., Bayer TA, Multhaup G


3月12日(土)
▼ 論文の査読。コメントも書く。
▼ ちょっと大学で仕事をしに行ったあと、午後はTY君の論文の最終チェック。明日には投稿したいところだ。
▼ 夜はカーネギーホールへ。昨日から3日間、指揮者マリス・ヤンソンスがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団をつれてNYにやってきているのだ。今日は二日目。演目はシベリウスの交響曲第一番とブラームスの交響曲第1番。シベリウスの出だしのクラリネットからアンコールの最後の一音まで感動しっぱなしだった。美しい音色は健在だし、ヤンソンスの活きの良い指揮っぷりはシベシウスの4楽章やブラームスなどにとても良い方向に作用していた。小細工も利いているし、劇的な演出にも事欠かない。とりわけブラームスはやはりお家芸だけあって安定した演奏を聴かせる。一糸乱れぬ完璧なアンサンブル。きめ細かい絹のような音の弦と、暖音色の管が一体となった躍動感は、もはや“流石”としか言いようない。昨年の小澤征爾のベートーヴェンに匹敵する質の高さだった。明日の3日目も楽しみだ。
▼ 帰宅後はまたTY君の論文。
JP Induced sharp wave-ripple complexes in the absence of synaptic inhibition
in mouse hippocampal slices
 Volker Nimmrich, Nikolaus Maier, Dietmar Schmitz, and Andreas Draguhn
JP Deletion of the NR2A subunit prevents developmental changes of NMDA-mEPSCs
in cultured mouse cerebellar granule neurones
 Zhanyan Fu, Stephen M Logan, and Stefano Vicini


3月13日(日)
▼ 午前、TY君の論文を完成させて投稿する。
▼ 昼からカーネギーへ。今日はウィーン・フィルハーモニー公演の三日目。今日は前半がシェーンベルクの「浄夜」、後半がマーラーの交響曲第1番『巨人』。演奏自体は昨日のブラームスの方が完成度が高かったが、今日の演奏でも十分に贅沢。
▼ 今夜はNY滞在中最後の“カーネギーホール”のコンサート。無類の音楽好きの私としては感極まるものがある。自然に涙も溢れてくる。
▼ となりの老夫婦は演奏会中ほとんど寝ていた。かなりお歳の方と見える。老後にこうして二人でカーネギー・ホールにコンサートに来て、VPOのライブで心地よくウトウトするなんて、なんというか私から見れば最高の至福な人生だと思う。
▼ コンサート後は買い物。中華街に立ち寄りJoe's Shanhaiで小龍包を食べ帰宅。
▼ 帰宅後は金曜の発表の準備。
Science A transmembrane intracellular estrogen receptor mediates rapid cell signaling Revankar CM, Cimino DF, Sklar LA, Arterburn JB, Prossnitz ER. エストロゲンの速い作用は膜小胞上のGタンパクであるGPR30を受容体として介している。


3月14日(月)
▼ 午前、Lab Meeting。昨日までCold Spring Harborで行われていた「Imaging Neurons & Neural Activity」の学会報告など。
▼ 午後、実験。まあまあの結果を得る。
▼ 帰宅後は金曜の発表の準備。
▼ 風邪ひいた。ここ2年全然ひいていなかったのに。。。とりあえず薬飲んで早く就寝。
▼ 『脳トレ[不安に負けない編]』3月28日発行決定。これに伴い元祖『脳トレ』も増刷。こちらは第11刷3000冊。
CC Abstract A Morphogenetic Model for the Development of Cortical Convolutions Toro R, Burnod Y


3月15日(火)
▼ 午前実験。染色はとても良かったが、Activityはそれほどでもないかな。
▼ 午後は諸々の仕事。
▼ 夜はメトロリタン歌劇場へ。演目はリヒャルト・シュトラウス作曲の『薔薇の騎士』。私がもっとも生で観たかった演目だ。スーザン・グラハムSusan Graham)、アンゲラ・デノケ (Angela Denoke)ローラ・エイキン(Laura Aikin)、ピーター・ローズ(Peter Rose)といった面子。さらに第一幕のちょい役“歌手”にまでマチュー・ポレンツァーニ(Matthew Polenzani)をあてがうスゴさ。今日はオケの伴奏も優れていて、とても感激した。絢爛耽美的な退廃美。あまりも美しい。NY最後を飾るコンサートとして十分過ぎるものがあった。ちなみに、妻はあまりこのオペラは表層的過ぎて好きではないらしい。確かにそういう意見の人も少なくないだろうなあ。
PNAS Physical limits to spatial resolution of optical recording: Clarifying the spatial structure of cortical hypercolumns Jonathan R. Polimeni, Domhnull Granquist-Fraser, Richard J. Wood, and Eric L. Schwartz
PNAS Enhanced cocaine responsiveness and impaired motor coordination in metabotropic glutamate receptor subtype 2 knockout mice Yosuke Morishima, ... Shigetada Nakanishi


3月16日(水)
▼ 一日データ解析、というよりデータの整理整頓で尽きる。
▼ 夕方、RK君とRXY君がやってくる。今日から5泊していく予定。
▼ 早速、3人でハーレムを散歩しながらソールフードのレストランに入る。旨い。
Science Self-Organized Origami L. Mahadevan and S. Rica 自己組織化と「おり紙」。「三浦折り」を考案したのは東大の先生らしい。


3月17日(木)
▼ 午前、Morganeと実験や今後のテーマの話しなど。
▼ 午後はデータ整理はラボからの引越しの準備など。ラボのデスクが大分片付いた。
▼ 夜は明日の発表準備。
Nature Optimal eye movement strategies in visual search Jiri Najemnik and Wilson S. Geisler 視野検索のための最適な眼球運動戦略
JNS The Role of Extracellular Adenosine in Regulating Mossy Fiber Synaptic Plasticity Maria Kukley, Maximilian Schwan, Bertil B. Fredholm, and Dirk Dietrich
JNS Developmental Switch in Synaptic Mechanisms of Hippocampal Metabotropic
Glutamate Receptor-Dependent Long-Term Depression
 Elena D. Nosyreva and Kimberly M. Huber
JNS Postsynaptic Expression of Homeostatic Plasticity at Neocortical Synapses Corette J. Wierenga, Keiji Ibata, and Gina G. Turrigiano
JNS Stimulus-Dependent Changes in Spike Threshold Enhance Feature Selectivity
in Rat Barrel Cortex Neurons
 W. Bryan Wilent and Diego Contreras
JNP Integration of Synaptic Responses to Neighboring Whiskers in Rat Barrel Cortex In Vivo Michael J. Higley and Diego Contreras
JNP Local Field Potential Oscillations in Primate Cerebellar Cortex: Synchronization With Cerebral Cortex During Active and Passive Expectancy Richard Courtemanche and Yves Lamarre
JNP Impact of Time-Dependent Changes in Spine Density and Spine Shape on the Input-Output Properties of a Dendritic Branch: A Computational Study D. W. Verzi, M. B. Rheuben, and S. M. Baer
JNP Size Does Matter: Generation of Intrinsic Network Rhythms in Thick Mouse Hippocampal Slices Chiping Wu, Wah Ping Luk, Jesse Gillis, Frances Skinner, and Liang Zhang
JNP Spatial Reconstruction of Trajectories of an Array of Recording Microelectrodes Thomas Naselaris, Hugo Merchant, Bagrat Amirikian, and Apostolos P. Georgopoulos


3月18日(金)
▼ 朝、パーティーの準備のために部屋の模様替え。こちらに来て以来はじめてテーブルや家具の位置を動かした。なんか部屋が新鮮に見える。
▼ SF君の論文を復習やら、引越しの準備やら。
▼ 夕方から私の文献紹介。SF君の投稿中の論文の内容を紹介する。内容が難しいのでうまく説明できたかわからないけど、Talk後にちょっと印象を聞いてみたらわりと興味を示していてくれたみたいだ。
▼ その後、すぐに帰宅してパーティーの準備。
▼ 8時からラボの人や日本人の友人らが集まる。あの狭い部屋に40人近く集ってくれた。嬉しい。というか狭苦しくて申し訳なかった。RK君やRXY君らが日本から持ってきてくれた飲食品や、こちらで用意した日本の“食”にラボの人が喜んでくれた素直に嬉しい。とくに日本酒はどの国の人にもウケが良いようだ。パーティーは2時過ぎまで続いた。途中で帰ったRobertoが泥酔状態で残してくれた別れ際のコメントが嬉しかった。
▼ 今週のF1000: JNP Encoding and retrieval in the CA3 region of the hippocampus: a model of theta phase separation Kunec S, Hasselmo M, Kopell N
▼ 今週のF1000: PNAS Single-neuron responses and neuronal decisions in a vernier task Zhang Y, Reid RC


3月19日(土)
▼ 今日は一日、RK君とRXY君のNY観光をガイドする。
▼ 午前はグラント将軍の墓、Yusteラボ、アポロ劇場。
▼ 午後はブルックリン・ビール工場でのんびり一服。そして「コーナー・ビストロ」でハンバーガーを食べる。どちらも最高に美味い。
▼ 夕方からフラット・アイアンに立ち寄りながら、メトロポリタン美術館のハイライト巡り。
▼ 夜はダコタハウスに立ち寄りながら、ブルックリン・ブリッジの夜景ポイントで和む。
▼ 帰宅後は日本酒を飲みながら深夜まで語る。


3月20日(日)
▼ 午前、パソコンのバックアップとセットアップ。デスクトップPCを手持ちで持って帰ることにした。
▼ 午後、妻の宿題を手伝う。
▼ 夜はRK君とRXY君と飲む。


3月21日(月)
▼ 朝、RK君とRXY君を駅まで見送る。薬作で使う教科書などを持って帰ってもらう。
▼ 一日、引越しの荷造りで果てる。20箱作った。
▼ 途中、ちょいとお土産の買出し。個人的にうれしいのが、インスタントラーメンを作るためにかった「オールクラッド(All Clad)」の鍋(正式にはソースパン)。
▼ そういえば我々はキッチン用品を主に「WMF」で揃えいるんだけど(その他のブランドでは「ル・クルーゼ(Le Creuset)」や「オクソー(OXO)」、「ビレロイ&ボッホ(Villeroy & Boch)」、それに「オールクラッド(All Clad)」を買うことが多い)、妻が先日WMFの圧力鍋(パーフェクトプラス4.5L)を買ってきた。ずっと「フィスラー(Fissler)」の圧力鍋とどちらにしようかと迷っていたけれど、操作性とデザインの良さからWMFに決定。というかもともとアメリカではフィスラーはほとんど手に入らないからどっちみちWMFなんだけどね。
▼ 中華街で安くて馬鹿でかいスーツケースを二つ買ってきた。
▼ ブルーバックス「記憶力を強くする」がここに来て1万部も増刷を決定したのだそう。


3月22日(火)
▼ ここ連日、睡眠時間が3、4時間で朝が辛い。でもちゃんと7時に起きて引越しの続き。
▼ 午前は航空便(UPS)を3箱、薬作に送る。運賃は7万5千円くらい。
▼ 午後は日本通運の人が引越しを手伝ってくれた。全部で54箱の荷物になった。すべて船便。運賃は45万円くらいだとのこと。来米時よりも荷物量は2倍くらいになっているが、アメリカでは運搬用の箱が大きいので箱数自体はあまり変わらない感じだ。
PNAS Activity-dependent maintenance and growth of dendrites in adult cortex Chris Tailby, Layne L. Wright, Andrew B. Metha, and Mike B. Calford


3月23日(水)
▼ 今日は雪。
▼ 午前は妻の新しいアパートに荷物運び。タクシー2台に荷物をたくさん詰め込む。妻は大学を卒業するまでのあと2ヶ月間をNYで過ごすのだ。
▼ 午後は手持ち用の荷造り。途中、お土産などの買出し。
Neuron Activity Regulates Positive and Negative Neurotrophin-Derived Signals to Determine Axon Competition K.K. Singh and F.D. Miller
Neuron Increased Noise Level of Purkinje Cell Activities Minimizes Impact of Their Modulation during Sensorimotor Control F.E. Hoebeek, J.S. Stahl, A.M. van Alphen, M. Schonewille, C. Luo, M. Rutteman, A.M.J.M. van den Maagdenberg, P.C. Molenaar, H.H.L.M. Goossens, M.A. Frens, and C.I. De Zeeuw
JNS Early Presynaptic and Late Postsynaptic Components Contribute Independently to Brain-Derived Neurotrophic Factor-Induced Synaptic Plasticity Janet Alder ... Ira B. Black
JNS Visualization of Synaptic Ca2+/Calmodulin-Dependent Protein Kinase II Activity in Living Neurons Keizo Takao ... Yasunori Hayashi
JNS The Retrograde Spread of Synaptic Potentials and Recruitment of Presynaptic Inputs Brian L. Antonsen, Jens Herberholz, and Donald H. Edwards


3月24日(木)
▼ 午前:VISA連載の校正。Rafaと最後のDiscussion。大学のPCのクリーンアップ。いろいろな人にEメールで挨拶。3月31日の薬学会での発表の準備。そして帰宅して手荷物の荷造り。
▼ 午後:荷造りの続き。香を連れてRafa研に挨拶。買出し。
▼ 夜:いったん帰宅して手荷物の荷造り。妻の荷物を運び出し。
▼ そしてNY最後のディナーは「エル・シッド(El Cid)」で。我々夫婦がもっとも好きなスペイン料理。安くて美味いのだ。そして生ハム。
▼ 昨日は結婚2年半記念の日だった。今日、妻に『Ritz Thrift Shop』でミンクのコートを買ってあげた。いや、本当は昨日の時点でどれを買うのか決めてはあった。さすがにちょっと出費だったとはいえ日本で買うよりずいぶんと安い。NY最後の思い出として個人的にも嬉しい。とりあえず着てもらえるのは次の冬かな。


3月25日(金)
▼ 朝、JFK空港へ。荷物が多いのでタクシー2台に。
▼ 昼の便で日本へ飛び立つ。


3月26日(土) 東京
▼ 夕方前、成田に到着。アメリカ留学が終わった。すばらしい836日間だった。周囲で支えてくれたすべての人に感謝したい。

(2005年)

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