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10月1日(金)
▼ うむ、10月か。いよいよ帰国が近づいてきたかなと感慨深い。これから年末までの3ヶ月はアっという間に過ぎ去るだろう。
▼ 午前は科研費の申請書作成。
▼ 昼、けんちん汁。妻がル・クレーゼのおっきな鍋でけんちん汁を作ったので、実はここ3日間連続でけんちん汁。まだ半分くらいしか減っていない(汗) ちなみに、私はけんちん汁(もしくは豚汁)が大好きである。
▼ 午後はBoazと実験。久々に海馬スライス。
▼ 夕方はJasonの文献紹介。今日は今週のNature誌からWelikyラボの論文がとりあげられた。この論文の一部を意図的に拡張解釈するとこうなる。「Evoked発火パターンは自発発火に見られるパターンがrecruitされているだけである」。実はこれはJasonが現在行っているプロジェクトの結論と同じである。となると疑問なのは「じゃあ、脳はいまの発火パターンが内因的な自発発火によるものではなく、“実際に外から体験したものである”ということをどうやって知るのか」という話になった。また、発火パターンは成熟動物ほどcanonicalになるというデータから、我々も日齢の多いマウスで実験することも重要だという話になったとき、Aged動物からスライスを作るときには実験で使う「水」に注意しないといけないという話題が出てきた。スライス実験に一番良いのはSigamから買うHPLC精製水なんだそうだけど、面白かったのはフランスのどこだかの研究グループは「AVIANを使わないと実験が上手くいかない」ということ。そもそも、そんなもん実験に使うんかい。
▼ 夜は再び科研費。
▼ イチロー、シーズン最多安打数メジャーリーグ新記録達成!!!これはホントにスゴイ数字。そういえば、今年の大リーグは最多四死球記録(ジャイアンツのボンズ)、最多三振記録と記録づくめだ(レッズのダン)。
▼ 今朝はちょっぴり冷え込んだ。通勤時、屋外は13℃だった。ふと、過去の日記を見返してみたら、ちょうど去年の今頃はもっともっと寒かったようだ。にもかかわらず、大学校舎の全館冷房がついていたみたい。言われてみれば、室内が(外よりもさらに)猛烈に寒かったのを思い出す。今年は早々と全館冷房が切れた。少しは学習しているみたい?
▼ ところで私は生まれてこのかた、自発的に日記をつけたことはなかったけど、自分の足跡がこうしてきちんと記録として残っているという意味で、日記はわりといい習慣ではあるなあ、と少しは思う。
ただし私自身について言えば、過去の自分がどうだったかということよりも、今どうあるか今後どうあるかにより興味がある人間なので、自分の過去は自然忘却に任せてしまってもいい。まあどっちみち、日本に帰ったらこんな暢気な日記を書いている暇なんて、そもそもないんだろうなあ。。。(うーん、それはそれでツラいかも)。 そういえばつい先日、2ちゃんねるを訪問したら、もう私のスレッドはとっくに閉じていたようだ。これも過ぎてしまえばもうどうでもいい過去の話だ。自然忘却で消えてなくなるだろう。
▼ 来週予定されている学部主催のSpecial Talkが笑える。ニキビの治療薬「イソトレチノイン(Accutane)」。この薬はビタミンAの誘導体なんだけど、効果が抜群で、美容を目指す一部の女性からは熱狂的に支持されている。ただ強い催奇性とうつ病を誘発する副作用から日本では未承認薬である。以上が前知識。 んで、Peter McCafferyによる来週のトークのタイトルは「Can the Acne Drug Accutane Cause Depression
Through Inhibition of Hippocampal Neurogenesis」 わからない人は昨年出たこのScience論文を読むべし。
▼ 先日の安田さんの日記にもあったけど、Carlosが今日からUCLAに移った。Carlosはラボで私の隣の席だった。渡米したてのころ、まったく口の利けない私に、アメリカ生活の心得だけでなく、英会話まで教えてくれた。彼には感謝してもしきれない。美人のYvetteとも結婚秒読みらしいし、ますます彼の研究が進展することを祈りたい。
▼ 榎木さんの日記: 英語力 ── 妙に納得。それってまったく私と同じ状況だ。でも私の場合、今のところどうにもならない問題だし、しかも最近の私は向上すべく努力をしていない。2年間もアメリカにいてその程度か?といわれても、はい、としか言いようがないレベル。だって、いまだにレストランでまともにメニューの注文さえできないのだ(まぢで本気な話)。でも、それで良い。英語がすべてではないんだから。。。と開き直ってみる。
▼ とりあえず、アメリカに渡った私に起こった大きな変化は、たとえば日本にいた頃は自分の担当の研究報告が終わるとホッと一息したものだが、アメリカでは研究報告が終わっても安堵するどころか、英語のできなさに自己嫌悪状態になることが挙げられる。今月20日に新ポスドクとして日本人がYusteラボにやってくる。彼は英語がスゴく上手いので、ぜひ上達のコツを聞いてみよう。
▼ 一口英語教室: 「最近、どう?」「相変わらずさ」 → How are you doing?
same as ever.
10月2日(土)
▼ 朝からずっと科研費書類。
▼ サークル時代の友人が日本から訊ねてきたので一緒に「カフェ・セントロ(Cafe Centro)」で夕食をとる。その後、リンカーセンターまで歩きながらミッドタウンを案内する。
10月3日(日)
▼ 午前はロンドンから遊びに来ている友人と「グッド・イナフ・トゥ・イート(Good Enough To Eat)」でブランチ。某金融機関の中枢で働いている彼(数学者)から、「経済学」の基礎についていろいろ教えてもらう。risk
aversion、decision weight function、Bayes、behavioral financeなどなど。この辺の話題は吉田さんの最近の日記にもろ関係している。んで、Neuroeconomyという新分野が最近流行っていると話したら興味を示していた。さらに私が今日たまたま持っていたSchultzのScience論文を見せて、expectationやprobabilityやrewardについて脳の側面からもいろいろと議論する。偶然とはいえわずかに関係していてウケる。彼はFig3Cでprobabilityが0.5でpeakになることを面白がっていた。金融側として商品を売る立場から考えると、この点は不確定性が高く(一見矛盾しているが)一番安い値が付くポイントであるらしい。最後に「儲けたければ行動ファイナンスを知ることだ」という話の内容はかなり笑えた(秘密)。いや、その通り。いま書いている研究予算申請の“釣り文章”もそれに近いな。 ともかく、昨日・今日と「有朋自遠方来、不亦楽乎(孔子)」である。
▼ 昼過ぎから夜まではずっと科研費書類。うーん、だんだんイヤになってきた。。。
▼ 「Idiomatic and Syntactic English Dictionary」という辞書をパラパラとめくっていたら、「lunar rainbow」という言葉を知る。別名「Moonbow」と言うらしいんだけど、月の光でできる虹のこと。まだ私は見たことないなあ。和名は「月虹」。ちょっとお洒落な名前だな。ちなみに、この英語辞書はNN先生が私に推薦して下さったんだけど、表紙の裏にあるTableを見てもらえばわかるように、動詞の扱いについて丁寧に分析されていて、論文を書くときなどにとても便利な英英辞典である。個人的にはちょーお勧め。
▼ 一口英語教室: 「彼女は相変わらず忙しそうだ」 → She seems to be as
busy as ever.
10月4日(月)
▼ 朝、Jasonの研究報告。
▼ その後、夕方まで科研費の書類書き。MKY先生のコメントをもとに書き直す。予算申請はホント大変だし、はっきりいってツラい。教官は裏ではこんなに苦労しているんだから、学生達はラボの資金を支えているスタッフ達を(仮に彼らがアホでも)もっともっとリスペクトした方が良いと思うぞ(笑)ウソ
▼ 夕方は実験の準備。
▼ 夜は衣替えなど。
▼ 阿部君に長男誕生。
▼ まあ、当然なんだけど、今日のコロンビア大学はRichard Axel教授のノーベル賞受賞で盛り上がっていた。いやはや、彼なら貰って当然だろう。文句なしの受賞だ。Eric Kandelに続き、コロンビア大学の脳科学チームはますます権力を増幅しそうだ。午後にはさっそく記念講演(…というか記者会見みたいなもの?)が催された。あいにく本人はカリフォルニアに出張中なのでVideoでのTalk。というわけで、Rafaは出るように皆に薦めていたが私は出席しなかった。
▼ ふと思ったこと。Rafa研は月・金にラボゼミが入っている。薬作では月・土だ。各曜日の発表担当者があらかじめ学期の始めに決められるのは両方とも同じ。でも、決定的に異なることがある。たとえば、急なイベントや用事などでその日のセミナーがなくなったときの対処法だ。薬作では「順延式」を取る。つまり担当者は翌週に回される。そして以降の全スケジュールも1週間分シフトする。ところがRafa研は「除去式」。その日のセミナーがキャンセルになったら、その人だけが“発表なし”になって、全体のスケジュールには変更はない。実際のところ、大抵の場合は、日本の職場は「順延式」、アメリカの職場は「除去式」だろう。
▼ んで、これを聞いた日本人のほとんどは「アメリカ式だったら、自分担当の発表がなくなったら仕事が減ってラッキーだな」と思うに違いない。だって、たとえば担当が一年に1回ペースだったら、1回削られれば次回まで丸2年巡って来ないんだからラッキー。何とも情けない話であるが、私も日本にいた頃だったらそう感じただろう。 でも欧米人は違う。現にこのラボでも「再来週、ボスが都合が悪いみたいで、もしかしたら自分の発表がなくなる可能性があるんだけど誰か私と交代してくれない?」的な打診がしばしばある。自己顕示、自己主張。なんとしても発表の場を確保したいのだ。「自分の発表のチャンスが奪われたら損」─
勉学とは自発的なものである。そうした積極的な姿勢は日本人にはなかなか見られない。研究生活においてどちらが本来あるべき姿なのか……言うまでもないか
▼ JP Principal neuron spiking: neither necessary nor sufficient for cerebral
blood flow in rat cerebellum Kirsten Thomsen, Nikolas Offenhauser and Martin Lauritzen
10月5日(火)
▼ 今朝は一気に冷えた。最低気温6℃。でも今日だけみたいでよかった。
▼ 午前、Andyがスケジュールに入っていて実験ができなかった。明日に持ち越し。
▼ 午後はKN君が作ってくれたスライドを自分用に作り直す。10%くらい終了。
▼ 夜はメトへ。ワレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)の指揮でワーグナー作曲『ワルキューレ』(歌手陣はこちら)。実はこれ、今年5月にもレバインの指揮で観ているんだけど、良いモノは何度観ても良い。今回は指揮者がゲルギエフなので、音楽の造り方がまったく違う。『ワルキューレ』というと、どうしても第3幕の「ワルキューレの騎行」という有名な曲(知らない人はこちらでどうぞ)のイメージが先行して“派手”な感じがあるけれど、実際には抒情の極致で、オーケストラの扱い方もかなり室内楽的。この意味で、オケの機能性よりも旋律や流れを大切にするゲルギエフのアプローチはこの楽劇にぴったりだ(彼はVPOを頻繁に指揮するようになって曲作りが柔らかくなったと思う)。楽劇「ワルキューレ」のテーマはずばり『愛』。第3幕の身ごもった子供を助けたい母性愛、愛する娘を罰しなければならない父親の葛藤、第2幕の愛し合う二人を救おうとする献身の愛。いずれも感動的だ。しかし何よりも心を揺さぶられるのは、第1幕後半、運命の渦に飛び込んでいく若き二人の愛。何度観ても目頭が熱くなる名シーンだ。うーん、すばらしい!感涙 ちなみに私のお薦めCDはクナッパーツブッシュ&VPOのこれ。気まぐれな指揮者ゆえに第1幕しか録音されなかったんだけど演奏は空前絶後。クラシック界の至宝だ。『ニーベルングの指輪』が好きな方はぜひ。
▼ カタカナ英語の本の表紙がamazonにアップされた(こちら)。
▼ 今更ながら「モジラ(Mozilla 1.7.3日本語版)」を大学のPCにインストールして使ってみる。
▼ NM Sulforhodamine 101 as a specific marker of astroglia in the neocortex in
vivo Axel Nimmerjahn, Frank Kirchhoff, Jason N D Kerr & Fritjof Helmchen スルフォローダミン101がアストロサイトの手軽で堅実なマーカーになるというデータ。MKY先生必読(?)
▼ PNAS Efficient reversal of Alzheimer's disease fibril formation and elimination
of neurotoxicity by a small molecule Barbara J. Blanchard, ... Vernon M. Ingram アミロイドβ1-42凝集塊のβシート構造Contentを減らす化合物のスクリーニング。
▼ PNAS Spatial memory, recognition memory, and the hippocampus Nicola J. Broadbent, Larry R. Squire, ... Robert E. Clark ラット海馬を破壊していくと空間学習(水迷路試験)も非空間学習(新規物体認識試験)も成績が低下するが、前者の方が破壊体積に対する脆弱性が高い、という内容。
▼ 今週のF1000: NN Regulation of ion channel localization and phosphorylation by neuronal
activity. Misonou H, Mohapatra DP, ..., Anderson AE, Trimmer JS
▼ 一口英語教室: 「あなたのお力添えのおかげで職につくことができました」
→ Thanks to you I was able to get the job. ※仮定法過去に取られるので、誤解を避けるために日常会話ではできるだけcouldは用いない方がよい。
10月6日(水)
▼ 午前、実験。ちょっと進展あり。
▼ 午後は科研費の準備と、文献チェック。
▼ 夕方は「ハドソン・カフェテリア(Hudson Cafeteria)」で食事してから、カーネギーホール・シーズン開幕ガラ・コンサートへ。昨年のOpeningはゲルギエフ&キーロフであった。あのコンサートは私のこれまでの中でもトップ3に入るすばらしい名演だった(こちら)。というわけで今年もオープニング・ナイト・ガラは外せまいと出かける。今日はエッシェンバッハ指揮フィラデルフィア管弦楽団でリヒャルト・シュトラウスの作品だ(演目はこちら)。12月の日記にも書いたように、私はリヒャルト・シュトラウスの音楽が結構好き。にしても、交響詩『ドン・キホーテ』は19世紀に作曲されいるわけだから、その前衛性には驚かされる。ソロのヨーヨー・マ(Yo-Yo
Ma)のふくよかな音は実演でも素晴らしかった。彼の出る日のチケットはいつも売り切れで、前売り券を買ってようやく今夜初めて生で聴くことができた。
▼ 実験中に調べてみたら、『進化しすぎた脳』がBK1での売り上げランキングの「科学・技術・医療・建築部門」で一位になっている。きけば総合順位でも先週7位に入ったということ。まだ発売前なのにとってもとってもありがたい話である。たぶん出版社が作って下さったbk1での宣伝文句が良かったのかな。ともかく全国の理系高校生の皆さんにぜひ読んでほしい(っつうか、この日記は誰も読んでないんで宣伝効果ゼロなんだ…)。
▼ TY君の論文がダメだった。これは私が書いてきた中でもとりわけ面白い論文なのに。。。なんでだ。ふう
▼ Andyがこんな論文を紹介してくれた。私にお似合いということなんだろうなあ。もちろん早速読んだ。知っていることばかりだったけど、よくまとまっている。MKY先生もグラフ理論に興味あるんだったら読むべきかも。
▼ Nature Role for a cortical input to hippocampal area CA1 in the consolidation
of a long-term memory MIGUEL REMONDES AND ERIN M. SCHUMAN 海馬CA1へ直接入力する貫通線維(temporoammonic
pathway)を破壊すると長期空間記憶の“固定”が落ちるというわかりやすいデータ。ついでに同線維が海馬からのアウトプットを調節しているというSchumanの電気生理の論文も読むべし。
▼ Nature Surface mechanics mediate pattern formation in the developing retina TAKASHI HAYASHI AND RICHARD W. CARTHEW 未読。Figの写真がきれいなので載せてみた。
▼ JN Mechanisms of Fast Ripples in the Hippocampus Volodymyr I. Dzhala and Kevin J. Staley ラット海馬スライス。てんかんに関係しているといわれている250-600
Hzくらいの速いリップル波の仕組みについての、ちょっとマニアックな解析。結論はglutamatergic
transmissionを通じてintiationされintrinsic propertiesにより生み出されるというもの。SF君やTMさんは読む価値があるとは思う。いくつかのデータ解析は真似もできるはず。
▼ JN Laminar Patterning in the Developing Neocortex by Temporally Coordinated
Fibroblast Growth Factor Signaling Hiroshi Hasegawa,... Yasuto Tanabe 未読。皮質発達、FGF18とPea3
▼ JN Timing and Balance of Inhibition Enhance the Effect of Long-Term Potentiation
on Cell Firing Carrie P. Marder and Dean V. Buonomano ラット海馬スライスCA1。E-S増強のメカニズムの話題。intrinsic
excitabilityではなく、GABA性神経の関与の度合いや関与の仕方(タイミングなど)が変化することで生じるというもの。取り立てて劇的な結果はないけれど、薬作LTP軍は全員読んだほうが良いかもしれない。ついでに関連のあるBuonomanoの前報(これとこれとこれ(モデル))も併せて読んで、彼の独特な視点を見学うべし。
▼ CC Region Specific Micromodularity in the Uppermost Layers in Primate Cerebral
Cortex Noritaka Ichinohe and Kathleen S. Rockland 皮質第1層に見られる“パッチ状構造”に関する内容(これの続報)。随所に見られるRockland教授らしい文学的表現に注目。
10月7日(木)
▼ 今日は暖かかった。23℃。たぶん東京より暖かかったと思う。明日も暖かいみたい。
▼ 朝、科研費の申請書。結局、4つ申請することにした。
▼ 昼前からBoazと実験をする。海馬スライス。
▼ 夜、妻は友人とメトへ。ヴェルディー作曲『オテロ』。これも名曲だよなあ。ただ私は明日の準備があって残念ながら今日はパス。でも人間、忙しくなると現実逃避に走るもの。こんなアホなものを作って時間を無駄にした。。。お題「ニューヨークの思い出」
▼ 昨日の日記:bk1のリンクはつながっていないそうなので削った。というか、榎木さん!宣伝して下さってありがとうございます、感激
▼ 一口英語教室: 「日本に行ったら英語が通じなくて困ったよ」 → When I
went to Japan, I had trouble because no one understood English.
10月8日(金)
▼ 午前は科研費の申請書書き。まずは一通り完成したので、昼過ぎに日本の秘書さんにEメールで送る。
▼ 午後はJournal Clubの準備&勉強。今日は私の担当なのだ。文献はPrinceラボの最新論文を選んだ。え?理由?私でさえ英語で説明できるくらい簡単な内容から。。。これマジ。ところで「コレシストキニン」って英語で「チョレセスターケネン」みたいに発音するんだね。
▼ んで夕方からJournal Club。ほとんど準備できなかったにもかかわらず、いつもよりはプレゼンがしやすい(もちろんいつものように発表後は自己嫌悪になったけど…)。ところで薬作で誰かがこの論文を文献紹介に選んだら相当こっぴどく叩かれるだろうけど、Rafa研ではかなり好評だ、なぜだろう。。。Robertoだけがこの論文の問題点をずばり見抜いてくれた。さすがは細胞生物学の畑で育っただけあるな。
▼ 夜はNYフィルのコンサート。マゼール指揮&庄司紗矢香さんのバイオリンでプロコフィエフ作曲「ヴァイオリン協奏曲第1番」。彼女は日本期待のバイオリニストで、満を持してのニューヨーク・デビューというわけだ。妻は日本で聴いたことあるらしいんだけど、私は今日が初めての生演奏。音は中庸な感じで派手ではない(彼女はストラディバリの“ヨアヒム(1715年)”を使っている)。テクニックは完璧でどんなに超絶的なパッセージでも難なく弾くし、しかもまだまだ余裕がある。あの華奢な体から見事なプロコフィエフが生まれるのは感動ですらある。自己主張が強くないので、オケとのバランスのとれた調和が見事。あとは音に“艶”が出てくればパーフェクトだ(でも、この若い音楽家にそれを求めるのはまだ早いか…)。ま、ともかくまだ21歳。周囲の雑音を気にせず大きく羽ばたいて欲しいな。ちなみに今日とまったく同じ演目&演奏家のコンサートは今月日本でも聴ける(こちらを参考)・・・ちょっと高いけどね(NYだと半分から4分の1の値段で聴けるし、我々の場合は学生証を見せればS席(かA席)が1100円なので)。 明日は朝早いのでプログラム後半のプロコ5番は聴かずに帰宅。うーん、断腸の思いだ。。。
▼ それにしても、ストラディバリってスゴい楽器だ。1700年頃といえば、ルイ14世の時代。そう、ビバルディとかの曲を演奏するために作られた弦楽器。300年経った今でも、(科学・工学技術は格段に進歩しているにも関わらず)この質を越える楽器を作ることができず、いまだに大切に使われ継がれている。まさに人類の宝。そんな機器類って他の分野にあるだろうか。しかも、製作当初の想定外だったバルトークやプロコフィエフのような近現代曲にまでフィットするその懐の深さ。本物はスゴい。
▼ 昨日私が作った絵は「何だ?」という反応あり。あれはオランダ大画家モンドリアンが最晩年に戦争を避けNYに移住したとき、この街の印象をもとに描いた絶佳の傑作「ブロードウェイ・ブギ・ウギ」をもじったモノ。この絵は「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」にある。私のアパートが“ブロードウェイ街”に面しているのでこれを使ってみた(これって著作権に違反する?)。彼の絵を見たい方はこちらをどうぞ。
▼ んで、私のアパートの窓から撮ったブロードウェイ通りの風景はこんな感じ。いわゆる“NYネオン街”の雰囲気ではない。写真左奥にタクシーが止まっている場所は、コロンビア大学の正門
= つまり私の勤務地である。
▼ ところで、“ニューヨーク(紐育)に来る”ことを「来紐」とかって書く人がいるけど、これってなんて読むんだ?らいちゅう?
▼ こちらではニューヨークのことを別名で「Big Apple」と呼ぶ。新聞なんかでしばしば出てくるので知ってないと読めない。あと、ここマンハッタンのあるニューヨーク市はその都会さゆえにニューヨーク州の“州都”だと勘違いされがちだけど、州都は「アルバニー」という田舎町なのだ。だいたいアメリカのどの州でも、州の“地理的”な中心地を州都として選んでいる。それは「州内のどこからでも州会議員がアクセスしやすく、距離として平等になるから」というアメリカらしい民主的理由。でも、これってちょっと間違っているような気がしないこともない。だって、ちゃんと人口の重みを付けて平均化しないとね。Σ(ω・x)/Σabs(ω・x)
だ。
▼ Rafaが先週のLab Meetingで私が話した内容に異様に興味を持ってくれているみたい。私のことをとても大切に扱ってくれる。ありがたい話である。
▼ 一口英語教室: 「どうかな? 微妙なところじゃないかな」 → Who knows?
I suppose it'll be touch and go.
10月9日(土) カナダ
▼ 朝、ラ・ガーディア空港へ。でも予約したはずの便がなぜか間違って登録されていて結局トロント経由でケベック市へ。
▼ 夕方からケベック市内を散策。石畳路面に石積建築。4年後に400百年記念を迎えるという歴史都市ケベックは西洋以上に西洋している街で、とても素晴らしい景観だ。街並みそのものが世界遺産に登録されている。道行く人はもちろんフランス語だけど、英語も上手い。
▼ 夕食は『ル シャンプラン(Le Champlain)』でフレンチ。ワインは「シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド(1998)」を合わせる。無論美味しいんだけど、“いわゆるラランドの味”とはかなり違っていて、サンテミリオン地区のシュバル・ブランに近い味だった。保存の仕方かな?
▼ 宿泊はお城のような佇まいの「フェアモント・ル・シャトー・フロンテナック(Fairmont Le Chateau Frontenac)」。ここは一度泊まってみたかったホテル(写真)。おとぎ話に出てきそうな空間がなんとも言えない。
▼ 感想:バンフ以上に日本人の団体客がいる。まあ、それも理由あってのこと。カナダはやはり日本人気質には向いている国だ。すくなくともアメリカ以上には。
10月10日(日) カナダ
▼ 午前はケベック市内の散策しながら、買い物など。昼食は「レショード(L'Echaude)」にて。
▼ 午後は郊外へ。ローレンシャン高原、モンモランシー滝、オルレアン島などを巡る。なぜ今回我々はケベックに来たのか(そして多くの日本人がなぜケベックに集まるか)と言えば、その理由は、そう、ここは世界一の紅葉の勝景地だから。カナダの“国の木”として国旗にもデザインされているカエデがこの時期一斉に真っ赤に染まるのだ。その景色は圧巻らしい…。ただ、今年は(日本とは違って)冷夏だったので、染まり具合がちょっと悪いみたい。しかも、3日前の豪雨でほとんどが散ってしまったらく、枯れ木が多かったのがちょっと残念。まあ、それでも文句なしの美しさだけどね。たとえば綺麗な景色を選ぶとこんな感じだ(右上の写真は色調を変更してある)。ちなみに、期待していたのはケベック公式HPにあるこんな景色。これをネダるのは贅沢か。。。
▼ 夕食は「オー ザンシャン カナディアン(Aux Anciens Canadiens)」にて。
▼ 夜はJ Neurochem論文の審査(SOC関係の論文)。判断の方向と大まかなコメントを決める。
▼ TINS Neurons and glia: team players in axon guidance Carole Chotard and Iris Salecker
10月11日(月) カナダ
▼ 今日はアメリカは休日。ちなみにカナダも休日。偶然だけど日本も休日。でも、Rafa研は休日は関係ないので、つまり私は今日はサボったというわけ。。。ごめんなさい、Rafa
▼ 午前はケベック市のランドマーク等を巡る。州会議事堂やノートルダム教会など。
▼ 午後にNYに帰る。飛行機が離陸した直後に見えたケベック郊外の風景(写真 ← 明度&コントラストは変えたけどカラー&彩度はそのまま!)。空からみるとどこが紅葉の見頃になっているかがよく分かる。これを地上から見たかったなあ。それにしても“燃えるような赤”とはよく言ったもので、一面が赤い場所は本当に山火事のように見える。うーん、すばらしい。
▼ 今回ケベックの街角で見つけたスゴい物。なんと1900年ビンテージのシャトー・ラフィット・ロートシルト。1本400万円だそう。にしても、ペトリュスは100年持つと聞いたことがあるけれど、ラフットは大丈夫なんだろうか。
10月12日(火)
▼ 午前実験。
▼ 午後は来週用のTalkスライドの直し。夜まで。
▼ 旅行から帰ってみたら「カタカナ英語」がamazon.co.jpでベストセラー入りをしていた。やばいって、これ。。。恥ずかしいから、みんな買わないで〜
▼ Amazon.comで買った沢山の楽譜たちが届いた。楽譜を眺めるのが大好きな私。
▼ それから「ポケットチャレンジ(通称:ポケチャレ)」というゲーム感覚で楽しむ電子教材(ベネッセ社)を見本でいただいた。これハマるかも。ベネッセは現社長をソニー社から迎えていて、彼は電子教材にとても力を入れているんだとか。ポケチャレも(一般販売ルートに乗せていないにもかかわらず)100万台売ったというんだからスゴい話だ。今回はポケチャレの販促紙の監修を引き受けることになった。
▼ ゴジラ松井、今日も絶好調維持。リーグ優勝に向けてレッドソックス(シーズン中は実は負け越している相手)との初戦をとったのはデカい。
▼ PNAS Synaptic homeostasis and input selectivity follow from a calcium-dependent
plasticity model Luk Chong Yeung, Harel Z. Shouval, Brian S. Blais and Leon N. Cooper Cooperさんは“BCM”理論の“C”の人。未読。
▼ PNAS Masking and scrambling in the auditory thalamus of awake rats by Gaussian
and modulated noises Eugene M. Martin, Morris F. West and Purvis H. Bedenbaugh 未読
▼ 今週のF1000: JN A quantitative map of the circuit of cat primary visual cortex. Binzegger T, Douglas RJ, Martin KA この論文は“a gold mine for everyone interested in the neocortex”らしい。なんとなく難しそうだったからパスしていたけど、そう言うことならじっくり読んでみよう。
▼ 一口英語教室: 「この絵は子供にしては上手く描けている」 → This picture
is drawn well for a child.
10月13日(水)
▼ 朝からスライドの直し。夕方にはほぼ完成。
▼ 夕方は論文の審査の文章を書く。これもほぼ完成。
▼ その後は来週末からサンディエゴで催行されるSFN学会の演題チェック。面白い発表が沢山あってだんだんワクワクしてきた。
▼ 夜はSFNの発表に向けて、付け焼き刃的データのために、K-meansアルゴリズムのスクリプトを書き始める。
▼ Nature SFNを睨んでのことだろう、今号では「Plasticity & neuronal computation」という特集が組まれている。来週のSFN会場で見本誌をもらって読もう。
▼ Nature A general mechanism for perceptual decision-making in the human brain H. R. HEEKEREN, S. MARRETT, P. A. BANDETTINI & L. G. UNGERLEIDER 理解に時間が掛かりそうだったのでパスしたが、イントロを読んだだけでも面白そうな気配がする。マシーン認識とかも考慮しながら、またいずれ読もう。
▼ Nature Neurolinguistics: Structural plasticity in the bilingual brain ANDREA MECHELLI, ... CATHY J. PRICE 第2外国語を習うと、 左脳の下頭頂葉部の灰白質密度が高まるという内容。第2外国語が上手ければ上手いほど密度が高いし、習い始めた年齢が若いほど密度が高くなる。もちろん、上達度と習得年齢はそれ自体に相関があるので、どちらが主要因かは不明。
▼Neuron New Online Access Policy for Neuron Neuron誌に掲載された論文は一年経ったら無料でアクセスできるようになるらしい。良いことだ。
▼Neuron Short- and Long-Range Attraction of Cortical GABAergic Interneurons by
Neuregulin-1 Nuria Flames, ... Oscar Marin 皮質介在神経のmigrationにおけるNeuregulin-1/ErbB4シグナルの役割を調べた論文。細胞外ドメインがcysteineリッチ型(V型)か
immunoglobulin型(T、U型)かなど、Neuregulin-1にはいくつかのisoformがある。介在神経の移動において前者が接着性、後者が分泌性の誘因因子になるという。
▼Neuron Induction of Spine Growth and Synapse Formation by Regulation of the Spine
Actin Cytoskeleton Karen Zito, ... Karel Svoboda NrbIを強制発現するとスパインに局在する。アクチン結合ドメインであるNrbI(1-287)を発現させるとアクチン重合を促進してspinogenesisが亢進される。このspineはシナプスをつくっているのだが、mEPSPが小さくなることで全体のインプットとしてはバランスが取れているという点が面白い。Turrigianoの提唱するsynaptic scalingや、MurthyのNature論文を彷彿させる現象だ。
▼Neuron AMPA Receptor-Dependent Clustering of Synaptic NMDA Receptors Is Mediated
by Stargazin and NR2A/B in Spinal Neurons and Hippocampal Interneurons Ruifa Mi, Richard, ... L. Huganir and Richard J. O'Brien 未読。
▼ JN Olfaction in Olfactory Bulbectomized Rats Burton Slotnick, Renee Cockerham, and Erin Pickett P2で嗅球の除去手術をしても、成熟後ラットは臭いを感じることができるのだが(こちら)、これが嗅上皮細胞が皮質に投射して、 glomerular様の構造をつくることができるからだ、というBrain Res論文を丁寧に再確認した報告。
▼ JN Differential Control of Synaptic and Ectopic Vesicular Release of Glutamate Ko Matsui and Craig E. Jahr 松井さんの論文で、これの続報に当たる。登上線維-Bergmannグリア間シナプスの特性を調べた論文。未読。
▼ JN Spike Timing of Distinct Types of GABAergic Interneuron during Hippocampal
Gamma Oscillations In Vitro Norbert Hajos, ... Tamas F. Freundラット海馬スライスにカルバコールでガンマ波を誘導。
興奮・抑制性を含む様々なタイプの細胞の自発発火のタイミングを調べている。図8は便利かも。海馬のGABA性神経を研究している人は印刷して机の前に貼っておこう。SomogyiのNature論文を一緒に読むと吉。MED64も使われている。SF君必読。
▼ JN A Mosaic of Functional Kainate Receptors in Hippocampal Interneurons Jeppe K. Christensen, ... Juan Lerma ノックアウトマウスや選択的阻害薬を用いながら、CA1インターニューロンではカイニン酸受容体がGluR5-GluR6やGluR5-KA2となどheteromericな構造を取っていることを示した論文。しかも細胞体と軸索ではその分布が異なる。
▼ JN 2-Chimaerin, Cyclin-Dependent Kinase 5/p35, and Its Target Collapsin Response
Mediator Protein-2 Are Essential Components in Semaphorin 3A-Induced Growth-Cone
Collapse Matthew Brown, ... Christine Hall 未読。Semaシグナルの分子機構の解析。RXY君用かな。
▼ JN Differential Requirements for Semaphorin 3F and Slit-1 in Axonal Targeting,
Fasciculation, and Segregation of Olfactory Sensory Neuron Projections Jean-Francois Cloutier, ... David D. Ginty 嗅神経の軸索誘導において、Slit-1がSteering、Sema3Fが束化に、それぞれ独立に寄与していることを示した論文。
▼ JN Optical Postsynaptic Measurement of Vesicle Release Rates for Hippocampal
Synapses Undergoing Asynchronous Release during Train Stimulation Yo Otsu and Timothy H. Murphy 海馬 CA1-CA3の分散培養。 単シナプス解像度を持ったasynchronous releaseのカルシウムイメージング。未読。彼らの前報はこちら。
▼ JN Phase Sensitivity of Synaptic Modifications in Oscillating Cells ofRat
Visual Cortex Valerie Wespatat, Frank Tennigkeit, and Wolf Singer ラット視覚野スライス第2/3層錐体細胞。シータ位相とLTP/LTDを論じたLismanのNature論文のガンマ波での“焼き直し版”みたいな感じだけど、さすがにヘルツ数が高いので“波”はcurrent
injectionで誘導してタイミングがきちんと合うようにしている。LTDのほうはAPVで切れない。
▼ JN Physiological and Morphological Characterization of Dentate GranuleCells
in the p35 Knock-Out Mouse Hippocampus: Evidence for an Epileptic Circuit Leena S. Patel, H. Jurgen Wenzel, and Philip A.Schwartzkroin このグループは、p35ノックアウトマウスが歯状回顆粒細胞のEctopiaを引き起こすことを報告しているのだが(こちら)、その変異マウスの顆粒細胞を詳細に調べたという続報。とりたてて重要なことは書かれていないけど、この位の質の実験を薬作でも達成したいところだ。RK君は必読。
▼ MCN Migrating and myelinating potential of neural precursors engineered to
overexpress PSA-NCAM Isabelle Franceschini, ... Monique Dubois-Dalcq GFP-tagged polysialytransferaseをneurosphereに強制発現させ、これをバラして神経堤に移植。細胞移動やミエリン化を観察したデータ。ミエリンを欠失したshivererマウスも使っている。
▼ 一口英語教室: 「ドキドキした」 → My heart started pounding.
10月14日(木)
▼ 午前、実験。
▼ 午後、明日のMeetingの資料作り。MorganeとDiscussion。その後、夜までK-meansのアルゴリズムの作成。ちょっと手間取る。
▼ 夜は電話インタビュー二つ。「ベネッセ」(ゲーム脳について)と「集英社」(ダジャレについて)。こうしたインタビューは“激貧ポスドク状態”の私にはめっちゃ嬉しいお小遣いになる。というわけで、高価ゆえに購入を諦めていたゲルギエフの新譜CDを予約する。早く届かないかなあ。
▼ Cell Control of Dendritic Branching and Tiling by the Tricornered-Kinase/Furry
Signaling Pathway in Drosophila Sensory Neurons K. Emoto, ... Y.-N. Jan 隣接細胞同士の樹状突起のオーバーラップを避ける(ここではTilingと呼んでいる)ために重要な分子としてTricornered
kinaseとFurryが同定されたという話。今号の表紙にもなっている。未読。
▼ Cell Ankyrin-Based Subcellular Gradient of Neurofascin, an Immunoglobulin Family
Protein, Directs GABAergic Innervation at Purkinje Axon Initial Segment F. Ango, ... Z.J. Huang 小脳介在細胞がプルキンエ細胞の軸索起始部に投射するためにneurofascin186という接着分子が「細胞体(低)←→軸索起始部(高)」のgradientを作ることが重要だというデータ。この傾斜は軸索起始部に特異的に発現しているankyrinGによって作られる。一般にinterneuronの投射先ドメインは厳密に決まっているのだが、この論文はその決定分子メカニズムに初めて迫ったものだと言える。
▼ Science Cleavage of proBDNF by tPA/Plasmin Is Essential for Long-Term Hippocampal
Plasticity Petti T. Pang, ... Bai Lu マウス海馬スライスCA1。L-LTPはBDNF(+/-)マウスやタンパク合成阻害剤処置で阻害されるのだが、BDNFはこれをrescueする。つまり遅延相のLTPにはBDNFが必要かつ十分。んで面白いのは、内因性proBDNFがplasminによって分解されることによってBDNFは通常supplyされていること。つまり、
tPAによるplasminogenの分解がキーというわけ。elegantな論文。
▼ Science Molecular Architecture of the KvAP Voltage-Dependent K+ Channel in a Lipid
Bilayer Luis G. Cuello, D. Marien Cortes, Eduardo Perozo 未読。
▼ Science Separate Neural Systems Value Immediate and Delayed Monetary Rewards Samuel M. McClure, David I. Laibson, George Loewenstein, and Jonathan
D. Cohen 未読。
▼ Science Numerical Cognition Without Words: Evidence from AmazoniaとExact and Approximate Arithmetic in an Amazonian Indigene Group。ともにトピックとして面白そうな感じだけど、まだ読んでない。
▼ JP Activity-dependent excitability changes in hippocampal CA3 cell Schaffer
axons A. F Soleng, A Baginskas, P Andersen, and M Raastad 内容はともかくこれはSchaffer側枝にIhが存在することを初めて示した論文(図6)ではないだろうか。TY君必読。って彼はもう読んでいないか、この日記は。
▼ N Synaptic activation patterns of the perirhinal-entorhinal inter-connections E. de Villers-Sidani, B. Tahvildari and A. Alonso 麻酔下ラット周囲皮質-(外側)嗅内野皮質の相互feedbackループに関する報告。vivo、vitro、細胞外記録、細胞内記録、いろいろやっているが、メインはCurrent
Source Density(CSD、電流源密度)解析。スライス作成には切る角度を調節してconnectionが保存されるように工夫している。周囲皮質からの入力を嗅内野皮質の第II/III層で受けるのはなんか不思議な気がする。
▼ N Hippocampal N-methyl-D-aspartatereceptor-mediated encoding and retrieval
processes in spatial working memory: Delay-interposed radial maze performance
in rats T. Yoshihara and Y. Ichitani 未読。
▼ 一口英語教室: 「君もいよいよこの春から社会人だね」 → So you'll finally
be entering the work force in the spring.
10月15日(金)
▼ 朝、もろもろの雑務。そしてプログラミング。ようやく昼過ぎにK-Meansのスクリプトが完成。予想通りsequnceたちは“類似性”をもとに細類できることがわかる。K-means法は初期値に敏感なので、“Inter-cluster
Distance/Cluster Diameter比”を指標に最適な初期値を見つけることが重要だった。まあfuzzy
K-meansを使えばitineracy中に極小値へ陥落することはないんだけど、今はそこまで凝る時間もないし、今回のは単にSFN用の“その場しのぎ”データなので、まあ良いかなということで妥協。
▼ 午後も再び諸々の雑務。結構手間取った。その後は発表用のポスターを作り始める。
▼ 夕方からはAndyの文献紹介。今日はこちらが取り上げられた。データの見せ方や論旨などなかなか見事で見習うべき点の多い論文だとは思うけど、Calcium
Imagingを専門にする我々からみると不自然に感じるデータがないわけでないところが微妙。
▼ 夜はBoazの送別会。彼はアパートはコロ大Housingの中では飛び抜けて素晴らしい。場所もリンカーンセンターの隣にある。Boazの発ったあとはMorganeがそこに入るらしい。
▼ JNP Layer Variations of Long-Term Depression in Rat Visual Cortex Yan Rao and Nigel W. Daw ラット視覚野スライス。皮質の長期抑圧(LTD)の層差(薬物感受性など)を調べた論文なんだけど、うーん、こういうのって今時どうなんだろう。すくなくとも細胞の再構築は必須だろう。Somogyiに夏に会ったときに、彼は「海馬CA1野の錐体細胞でさえ、その特性から最低でも17種類に分類される」と言っていたから、皮質ではもう目も当てられないんじゃないだろうか。まあこの論文は平均されたデータがとてもきれいだから、一応これはこれで意味のある知見である。
▼ JNP Developmental Changes in Release Properties of the CA3-CA1 Glutamate Synapse
in Rat Hippocampus P. Wasling, E. Hanse and B. Gustafsson ラット海馬スライス。シャッファー側枝シナプスのPaired-pulse
facilitationが発達(P3-27)に伴い現れてくることを追った論文。 うーん、しかし、tetanus
toxinの実験ってどうなの?しかもネガデータだし。
▼ JNP Influence of Lateral Connections on the Structure of Cortical Maps Miguel A. Carreira-Perpinan and Geoffrey J. Goodhill パス。
▼ 一口英語教室: 「適当に答えておけばいいよ」 → Just answer as you see
fit.
10月16日(土)
▼ 家に籠もって、スライドの直し。ポスター作り。そしてTY君の論文を改訂して投稿。これで通ってくれなかったら泣くな。
▼ 夕食は近所のハーレムにある「スプーンブレッド・トゥー(Miss Maude's Spoonbread too)」へ行く。なかなか旨い。気に入った。
▼ 夜は科研費の書類。特定領域(神経回路機能)を一つ終わらせる。
▼ ゴジラ松井、とっても良い感じ。バットを振るたびに結果が付いてくる。SFNから帰ったらワールドシリーズ観戦でも行こうかなあ(10月29日、30日の予定日まで試合していればの話だけど…)。
▼ 今日もとくに話題もないので、最近とった実験データでも載せておく(avi、約400kb)。Fluo-4よりもOregon GreenのほうがLoading効率やSN比やの点で使い勝手が良いので(←まだ内緒なんだけど…)、最近はOregon
Greenばかり使っている。これはそのムービー。目で見ても容易に発火が分かる。第一次視覚野第II/III層錐体細胞。
▼ 今週のF1000: NL Alternative modalities of adenovirus-mediated gene expression in hippocampal
neurons cultured on microisland substrate. Chen H, Honse Y, Ikeda SR
▼ 今週のF1000: JN SynGAP regulates spine formation. Vazquez LE, Chen HJ, Sokolova I, Knuesel I, Kennedy MB
▼ 今週のF1000: Nature Structure of a glutamate transporter homologue from Pyrococcus horikoshii. Yernool D, Boudker O, Jin Y, Gouaux E
▼ 一口英語教室: 「体がだるい」 → I feel run down.
10月17日(日)
▼ 午前UCIでのTalkのスライドの直し。
▼ 昼は『アイランド・バーガーズ&シェイクス(Island Burgers & Shakes)』でハンバーガーを食べ、そのままカーネギーホールへ。今日はマウリツィオ・ポリーニ(Maurizio
Pollini)のピアノ演奏会。曲目はショパンとドビュッシーで(こちら)、これは去年キャンセルされたカーネギーでのコンサートと同じ演目である(過日の日本のコンサートでもこの中からいくつか弾いている)。いまだに世間の彼に対する印象はデビュー当時の鮮烈な録音(これやこれなど)にあるが、もちろん彼はもうガンガン鳴らすピアニストではない。60歳を越える巨匠である。ポリーニを聴くのは今日で3回目。つまり私は彼のファンである。正直、最近の彼の録音は善し悪しが激しいが、その中ではドビュッシーの「前奏曲第1集」(これ)が圧倒的に素晴らしく、文句なしの名演である。となれば、このところ続編「前奏曲第2集」を世界各地で集中して弾き込んでいる彼の姿勢になんとなく深い意味を感じてしまうわけだけど、今日のコンサートはそれを聴くのが目玉であった。んで、実際聴いてみて良かった。繊細なタッチ&ペダリングでいながら、全体として明瞭な構築性を崩さないあたりが彼らしい。これなら将来のCD化も期待だな。あとは前半のソナタ2番も見事な演奏だった。なんだかんだいって彼のショパンは良い。素晴らしいことだ。ただし、ノクターンは彼にはちょっと似合わないかも。バラードもね。あ、ただ、アンコールで弾いてくれたバラード1番は良かったかな(彼のCD録音の演奏以上に)。
▼ コンサート後は、ミッドタウンやアッパーウェストをちょっと散歩して帰宅。途中、Steinwayの展示場でピアノを弾いてみる。Uprightでいいからこのブランドのピアノが欲しいなあ。最低でも230万円か。。。うむ、明らかに無理じゃん
▼ 帰宅後は再び科研費に専念。残りの3つ、特定(統合脳)、若手A、萌芽もすべて完成させて秘書さんにEメールで送る。直しが入らないことを祈りつつ。
▼ 一口英語教室: 「かろうじてバスに間に合った」 → I just barely made
the bus.
10月18日(月)
▼ 朝大学に行くと、ラボの皆が口々に「マツイ最高!」と声を掛けてくれる。いあ、嬉しいねえ。別に俺がスゴいわけじゃないんなけど、でも、鼻高々である。
▼ 朝、Morganeの研究報告。主にOregon Greenの利点について。それからWaveletの使用についても。
▼ その後はポスター作り。午後はその内容についてRafaと話し合う。んで、結局、SFNの発表では直球勝負を避けることになった。つまり、アブストに書いた「長時間ムービー」についても、また「予測アルゴリズム」についても話さないことに。というわけで、簡単なグラフ理論の話題のみしか出さない。それならそれで準備が楽でいいや。ただ面白いのが、この路線の延長で、RafaがWatts(11月)とBarabasi(12月)の二人と議論する機会を作ってくれることになった。すごいことになりそうだ。っていうか、かのWatts氏が大学の隣の建物にラボを構えていることを今まで知らなかったのが恥ずかしい。
▼ 最近、実験上いろいろと苦労が多いのだが(つまり、あるときは染色が上手くいかなかったり、別のあるときは自発発火が起こらなかったり…まぢ理由不明だし…)、でも、Rafaは理解があって本当に優しい。自分が上の立場だったら、部下がこんな状況ではきっとをこっぴどく叱りつけるわな。感涙。
▼ 今回のSFNでは「RC ReidラボとEM Callawayラボの演題は必ず見て来くるように」との指示があった。彼らの研究に何か進展があったようだ。どうやってこういう事前情報を仕入れるんだろう。ただし、それが学会で公開されるかどうかは不明。
▼ 夜は「Good Shepherd Presbyterian Church」へ。Jupiter Symphony Chamber Playersの演奏を聴く。先日お会いしたピアニストの平田真希子さんが演奏されていたのもあって顔を出したのだが、サンサーンスの「動物の謝肉祭」などもあってかなり楽しめた。
▼ 今週は「クリストフル(Christofle)」のセール期間。我々は「Americaシリーズ」を少しずつ集めているだけど、今日、妻がドサっと買ってきた。これでまあまあ揃ってきたかも。たしかにセールはベラボーに安い。なぜかワイングラスやタンブラーまで買い込む。
▼ 今日から日本人がポスドクとしてラボにやってきた。頼もしい限りである。
▼ 今日知ったこと: 別所哲也さんが私と同じ藤枝東高校の出身だということ(こちら)。島田市生まれかあ。確かに言われてみればそう聞いたことあるような。
▼ 昨日のコンサートで聴いたショパンのピアノソナタ第2番。この第3楽章は有名な葬送行進曲。これを聴くと小学低学年のころに流行ったインベーダー・ゲームを思い出す。自機が全滅したときのゲームオーバーを知らせるメロディーがそれだ。ところが、妻はこの曲を聴くと「ラジオ体操第一」を思い出すらしい。そう言われてみれば、(おそらくトランペットの)ファンファーレを模した部分が、ラジオ体操の序奏部と似ていなくはない。
▼ ところで、この「葬送行進曲」の中間部はショパンの書いたもっとも簡素で美しい“天国的”な音楽の一つとして知られている。こんな具合に、「中間部」が崇高な音楽って結構あるような気がする。ぱっと思いつくだけでも、
モーツァルトの弦楽四重奏第15番ニ短調の第3楽章、ベートーヴェンの弦楽四重奏第13番変ロ長調の第5楽章(カヴァティーナ)、シューベルトの交響曲第9番「グレート」の第3楽章などがある。いずれも天から啓示を受けたとしか思えないような奇跡的な音楽である。ちなみに、ベートーヴェンのカヴァティーナについて言えば、すばらしいのは中間部だけでない。この楽章全体がため息がでるほど美しい。「これを思い出すだけで涙がこぼれる」と作曲者自身が語っているのも納得できる。
▼ Nature AOPで見つけた。TRPA1 is a candidate for the mechanosensitive transduction channel of vertebrate
hair cells DAVID P. COREY,... DUAN-SUN ZHANG マウスTRPファミリーの全33種類を徹底的に調べ上げ、TRPA1こそが耳毛細胞の機械シグナル変換装置の正体であることを示した優良論文。論文中にも書かれているが、TRPA1は他に冷感やマスタードやカンナビノイド、ブラジキニンなどにも感受性があり、ここら辺との使い分けがどうなっているかが次の課題だろう。
▼ 今週のF1000: JBC Lateral diffusion of inositol 1,4,5-trisphosphate receptor type 1 is regulated
by actin filaments and 4.1N in neuronal dendrites. Fukatsu K, Bannai H, ..., Inoue T, Mikoshiba K
10月19日(火)
▼ 朝大学に行ったらRafa研に「カラーレーザープリンター」が届いていた。うーん便利になった。というか、アメリカのラボは日本よりも全般に実験機器や環境が悲惨で、Rafa研ではカラープリントができないのはもちろん、通常のコピー機やFAX機すらないのだ(アメリカでは別に珍しいことではないんだけど)。それに比べて日本のラボは薬作を含め“物資的”にはとても恵まれている。
▼ 雑用や買い物やポスター作りなど。
▼ 昼飯は「ハローベルリン(Hallo Berlin)」でドイツ風ホットドックを食べる。ちょー旨い。この店はお勧め。夜は日本から来ている妻の友人と「クイーン・オブ・シバ(Queen
of Sheba)」でエチオピア料理を食べる。まあまあ良い。雰囲気もいい。帰宅後はポスター作りを続ける。
▼ 最近、私とMorganeは主にOregon Greenを使っているのだが、今日Andyは先週取ったMovieを皆に見せて「Fluo-4だってこれだけきれいなMovieが撮れる」と言っていた。まあ、それは私がScience論文でも示しているし、確かにそうなんだけどね(ただ実際そう主張するだけあって私のムービーよりもさらに質が高かったのには驚いた)。でもOregon
Greenの方が圧倒的に毒性が少ないので、Sliceに激しいLoadingを課すことができるのがデカいんだよなあ。まあ、どちらを使うかは好みの問題か。
▼ ヤンキース3連勝のあと3連敗。いまアパートの外の大通りでは発狂したヤンキースファンが奇声をあげまくっている。昨年と同じく、今年のポストシーズンも「松井選手が打てない試合=勝てない試合」という図式に。ヤンキースの戦力がいかに彼に依存しているかがよく分かる。
▼ いよいよBoazが発っていく。最近ちょっと一緒に実験をしていた新しい技法については、ついに完成しないまま終わってしまった。あと一息だった。成功すれば超Nature級だっただけに残念だ。。。というか、彼自身も言っているが、そもそもこのプロジェクトのコンセプトそのものにちょっと無理があったと言えなくもないので、研究とは本当に難しいものだ。
▼ Mol Pharmacolの審査員を引き受ける。今度もまたSOCの論文である。ようやくAB君の論文の真価が認め始められているってことかな。
▼ この「ようやく」という言葉で思い出したことがある。『日本の脳研究』というホームページがある。公的なものではないとはいえ4年半前に設立された由緒あるサイトである。先月末、ようやく我が「東京大学・大学院薬学系研究科・薬品作用学研究室」がそこにリストアップされた。薬作も「あそこでもなにか脳のことをやっているみたいよ」とようやく“日本国内”で認知され始めたということだ。がんばれ!薬作
▼ 「カーネギー・ホール」は世界でも有数のコンサートホールとして名高い。ここでは数々の歴史的名演が生まれている。よく言われることなのだが、同じ演奏家のコンサートに行くのでも、日本で聴くより、欧米で聴く方が良いのというのが一般的な意見。値段が安いだけでなく、ホールの雰囲気や音響が良いという点は一つの理由である。ただし音響について言えば、サントリーホールは世界でも屈指の音響の良さを誇るわけで、この点ついて言えば、なにもわざわざカーネギー・ホールで聴く必要はない。にもかかわらず、なぜ欧米で聴いた方が良いのか。その理由は単純である。それは演奏家が“真剣勝負”をするからである。歴史のあるホールに襟を正したくなるのは当然だろうが、しかし本当の理由はおそらくそうではない。それはNew
York Timesなどの批評が怖いからだろう。紙面で評論家に叩かれたら、それこそ音楽家としての生命に関わる。逆に、絶賛されれば今後のキャリアにとても有利に働く。となればカーネギーの演奏会では自分の一番良いものを出したいと思うのは普通だろう。この意味で日本の一般紙の評価は彼らにとっては脅威ではなく、真剣勝負をする必要性は微塵もない。そうでなくても日本でのコンサートは“時差ボケ”で良い演奏ができる状態からはほど遠いわけだ。ついでにいうと、日本の聴衆もイケなくはないような。日本人はなにかとブランド嗜好なので(それ自体は別に悪くないのだけど、でも)有名な演奏家でさえあればかなりマズい演奏であっても「ブラボー」の連呼。これでは「わかってないな」とナメられても仕方がない。
▼ まあ、これはクラシック音楽に限ったことではなく芸術全般について言える。ハリウッド業界に至っては「日本人は今だにアメリカに対して淡い憧れを持っているので市場としてはいいカモだ」と堂々と言われてしまうわけで、しかも図星なだけに日本人としてはちょっと悔しいような情けないような。もちろん明治維新以来の日本人の姿勢にも問題がないとはいえず。。。
▼ 『進化した脳』の見本が届いた。自著を初めて手にする感動 ─ これは何度味わっても最高である。表紙の色が鮮やかなこと! 養老孟司先生が推薦文を書いて下さるらしい。来週(水曜日だったかな?)の発売が楽しみだ。あれ?ちょうど学会中だなあ。
10月20日(水)
▼ ポスター切り貼り。ようやく終わる。ふー。
▼ RafaがHernan Alejandro Makse氏と私が話をする時間を作ってくれた。明日ラボにやってきてくれるみたい。彼の業績はなんと言っても"グラニュラー媒体(granular
media)"のモデルに関する一昨年のNature論文が有名だけど、実はグラフ理論の達人でもある。楽しみだ。つうか、Watts、Barabasi、Makseと大御所を3人も連続で招聘するとは、まさかRafaはこの分野で次の論文を狙っていこうと企んでいるのかな。怖いような楽しみなような。
▼ 明日のFlightのリコンファームをしたのだが、いまや電話で音声ガイド&音声認識のみの全自動なので便利。いや、厳密には、そのコンセプト自体は便利。。。なんだけど、私の発音力では音声認識装置に全く通じない・・・凹むなあ。何度もトライしていたら、そのうちにオペレーターが出てくれた。何となくみじめ・・・あな情けなや。 っていうか、『魔法の発音 カタカナ英語(講談社)』は“買ってはいけない”的商品の仲間入り必至ですな。
▼ やはりレッドソックスは強かった。先発のロー(Lowe)も抜群だった。 ヤンキースのワールドシリーズへの夢は大量点差であっさり破れた。NYの街は沈鬱。 3連勝4連敗は、なんと、メジャー史上初なんだそう。
▼ Nature Neural correlates of mental rehearsal in dorsal premotor cortex PAUL CISEK AND JOHN F. KALASKA 背側前運動野に(未来の)行動を“心”に浮かべたときに反応する神経細胞があるという内容。一部のデータはミラー神経の超拡張版とも捉えられる内容だが、今回の場合は“即物性”がなく、予測性(つまり時間軸)を伴うという点で大きく異なる。ここはぜひ吉田さんのコメントを聞いてみたい。面白い論文だと思う。
▼ Nature Performance of maximum parsimony and likelihood phylogenetics when evolution
is heterogeneous BRYAN KOLACZKOWSKI AND JOSEPH W. THORNTON アブストを読んだ感じだと、これも重要な気がするんだけど、丁寧に読まないと理解できなそうな論文なので、今は読んでいる暇がない。。。
▼ JN Novel Approaches to Monitor and Manipulate Single Neurons In Vivo Michael Brecht, Michale S. Fee, Olga Garaschuk, Fritjof Helmchen, Troy
W. Margrie, Karel Svoboda, and Pavel Osten SFN meetingの特集の一つ。今号の表紙にもなっている。
▼ JN The Beat Goes On: Spontaneous Firing in Mammalian Neuronal Microcircuits Michael Hausser, Indira M. Raman, Thomas Otis, Spencer L. Smith, Alexandra
Nelson, Sascha du Lac, Yonatan Loewenstein, Severine Mahon, Cyriel Pennartz,
Ivan Cohen and Yosef Yarom SFN meetingの特集の一つ。
▼ JN Autism and Abnormal Development of Brain Connectivity Matthew K. Belmonte, Greg Allen, Andrea Beckel-Mitchener, Lisa M. Boulanger,
Ruth A. Carper, and Sara J. Webb これもSFN meetingの特集の一つ。簡単なグラフ理論的な考察があるので印刷しようと思ったけど、PDFがダウンロードできず。
▼ JN Persistent Accumulation of Calcium/Calmodulin-Dependent Protein Kinase
II in Dendritic Spines after Induction of NMDA
Receptor-Dependent Chemical Long-Term Potentiation Nikolai Otmakhov, ... John Lisman 海馬スライス培養にGFP-fusioned CaMKIIαをGene
Gunで発現させた。LTP誘導を誘導するとSpineにCaMKIIαが移行し、しかもそれが長時間持続する。
▼ JN Polysialylated Neural Cell Adhesion Molecule Promotes Remodeling and Formation
of Hippocampal Synapses Alexander Dityatev, ... Melitta Schachner NCAM(+/+)と(-/-)から得た海馬培養細胞を使って、PSAーNCAMのPre-Post
homophilic相互作用がシナプス形成を亢進することを示している。FGFはともかく、この効果がNMDA受容体を介しているというデータ(図7)にはびっくり。
▼ JN Characterization of Fear Memory Reconsolidation Sevil Duvarci and Karim Nader アブストしか読んでない。
▼ 一口英語教室: 「何となくみじめな気分」 → I don't know why but I feel
miserable.
10月21日(木) サンディエゴ
▼ 午前、ラボを訪問してくれたMakse教授とたっぷりと話す。私の解析データについて興味を持ってもらえた。それからネイチャー誌に投稿中という彼の新しい論文を見せてもらう。これは回路のフラクタル性を解析したもの(詳しくはもちろん内緒)で、すげー面白い。有用性も高く、ポテンシャルを秘めている。Barabasiも大絶賛したという。そりゃ、そうだろうなあ。Makseラボにデータを渡してこの路線から解析してもらうことになった。
▼ 午後はJFK空港からサンディエゴへ。夜、ホテルに到着。空港ゲロ混み。タクシーは諦めてシャトルを使う。近所で買った野菜ジュースがスゴいまずい。ラベルをよく見たら「100%キャロット」と書いてある。たしかに、ニンジンを皮付きでそのままカジるとこういう味がする。
▼ 飛行機の中では『進化しすぎた脳』を読破。誤植をいくつか発見。
▼ Science A Network of Control Mediated by Regulator of Calcium/Calmodulin-Dependent
Signaling S. V. Rakhilin, P. A. Olson, A. Nishi, N. N. Starkova, A. A. Fienberg,
A. C. Nairn, D. J. Surmeier, and P. Greengard
10月22日(金) サンディエゴ
▼ 朝、Amtrakでアーヴァイン(Irvine)へ。サンディエゴからだいたい1時間45分くらいの距離にあるとても整備された街である。カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)のMcGaugh教授のラボで小さなセミナーをする。その後、Bennの主催する学部生の勉強会にも出席させて貰う。そこでは課題文献としてKN君のPNAS論文が取り上げられた。このラボに留学中の奥田さんには、セミナー設置からラボ&構内の案内、それに送迎までしていただき、とてもお世話になった。
▼ 夜には再びサンディエゴに戻る。
▼ N Scaling of prediction error does not confirm chaotic dynamics underlying
irregular firing using interspike intervals from midbrain dopamine neurons C.C. Canavier, S.R. Perla and P.D. Shepard
▼ N Resetting of ‘synaptic tags’ is time- and activity-dependent in rat hippocampal
CA1 in vitro S. Sajikumar and J.U. Frey
▼ N Differential upregulation of extracellular matrix molecules associated
with the appearance of granule cell dispersion and mossy fiber sprouting
during epileptogenesis in a murine model of temporal lobe epilepsy N. Heck, J. Garwood, J.-P. Loeffler, Y. Larmet and A. Faissner RK君用?
▼ N Disruption of reconsolidation but not consolidation of auditory fear conditioning
by noradrenergic blockade in the amygdala J. Debiec and J.E. Ledoux
▼ N N -methyl- D -aspartate receptor-independent long-term depression and depotentiation
in the sensorimotor cortex of the freely moving rat D.J. Froc and R.J. Racine
10月23日(土) サンディエゴ
▼ 学会一日目。でも午前はシーワールド、午後は動物園へ。サンディエゴは動物好きにはたまらない街である。ちなみにシー・ワールドは生涯3度目。でも何度見ても面白い。
▼ 夜は「オールド・タウン・メキシカン・カフェ」で食事。
10月24日(日) サンディエゴ
▼ 学会2日目。
▼ 昼は奥田夫妻とデル・コロナドでブランチ。なかなかゴージャスな気分。
▼ いくつか面白い発表を見つけた。
▼ 266.12 Callawayラボ。in utero electropolationで30°の角度をつけてganglionie
eminenceに遺伝子導入すると、皮質&海馬ではinterneuronに選択的に入るという内容だけど、実は歯状回顆粒細胞に(かなり選択的に)ガンガンに入っているのでかなり使えそうな感じ。
▼ 283.14 海馬培養細胞を-40mVでクランプしつづけると、15分くらいしたらmEPSPの頻度が上昇する。おそらくBDNFがpostからpreへretrogradeに効いている。この現象は32%の細胞に見られた。
▼ 300.15 Callawayラボ。ラット第一次視覚野スライス。第2/3層錐体細胞ペア記録。50um以下の隣り合った細胞ペアでは相互結合があるのは20%の確率。uncaged
glutamateで共通のシナプス入力を持っているかをSpatiallyにProbeする。層差、EPSP/IPSPの差が見られた。論文はNatureへ。リバイズ中だそう。
▼ 329.23 McNaughtonラボ。ラット水迷路&REM睡眠。内側前頭前野皮質からmultiunit記録。記録されたcross
correlationをとることで、学習中のスパイクパターンがその後の睡眠中に再生されていることを示した。このとき速度は5−7倍圧縮され、圧縮後のパターンの長さは800
ms程度であった。
▼ それからMoserラボ軍団が一連の成果を発表していたのが壮観だった。
▼ ホテルに帰ってからは、Makseラボにデータを送るためにグラフ・パターンの抽出のためにプログラミングに専念。
10月25日(月) サンディエゴ
▼ 学会3日目。薫さんとアメリカで初めてあった。元気そうで何より。
▼ 昼飯は安田涼平さんと一緒に。いろんな話をする。彼は(私とは違って)自分の意見をしっかりと持った、とても良い人。
▼ 夕食は薬作から来ている学生と。KM君はもちろん、会うのは(ほぼ)初めてだったHN君もとても優秀で薬作の将来がますます楽しみだ。
▼ その後はホテルにロビーでSF君と論文の打ち合わせ。これも面白くなりそうだ。
▼ 妻の情報によると、今日キアヌ・リーブスが映画撮影でコロンビア大学に来ていたらしい。長身なんだそう。
▼ 410.17 Vivoでルーズパッチ法でJuxtacellular記録するという方法。もちろん細胞構築も可能。比較的簡単そうだし薬作でもやってみたい手法だ。
▼ 420.15 脊髄神経を64チャネルMEA上で138日間培養。cross correlationで機能結合を抽出。そのグラフ特性を調べ、ネットワークにはself-organizationの跡が存在することを証明。
▼ 508.7 Markramラボ。ラット体性感覚野スライスL5錐体細胞マルチパッチ。錐体細胞を70Hz15APで刺激すると近辺の錐体細胞に100ms程度の潜時をもったIPSPが観察される。これがマルノッティ細胞(LTS細胞のひとつ)を介していることを示した論文。
▼ それから午前のBMIのセッションがなかなかスゴかった。詳しくは見れなかったけど、なんというかハヤりだなあ。
▼ PLoS Motifs in Brain Networks Olaf Sporns, Rolf Kotter
▼ PLoS Representation of Attended Versus Remembered Locations in Prefrontal Cortex Mikhail A. Lebedev, Adam Messinger, Jerald D. Kralik, Steven P. Wise
▼ JNP Enhanced Striatal NR2B-Containing N-Methyl-D-Aspartate Receptor-Mediated
Synaptic Currents in a Mouse Model of Huntington Disease. Li L, Murphy TH, Hayden MR, Raymond LA
10月26日(火) サンディエゴ
▼ 学会4日目。
▼ 午前に私の発表があった。昨年に引き続き好評で嬉しかった。ちょっと疲れたけどね。
▼ 昼は薬作OBで食事。
▼ 夜は京大の宮川先生にお誘い頂き、瀬藤先生、竹林先生、田中先生、上田(あげた)先生、宮本さんと食事。その後、理研Socialに出席するがあまりに大人数だったので、知り合いに挨拶だけしてホテルに戻る。
▼ ホテルでは論文の審査をする。
▼ 640.18 GFP-somatostatinマウス体性感覚野第2/3層LTS神経パッチ。L2/3や4を100Hz20発で刺激すると、reboundで2-8mV差のUP
state persistent activityを示す。この維持相はDNQX/APV/Pictrotoxinで切れないが、mGluR1阻害薬で切れるという点が面白い。
▼ 646.2 Reidラボ。vivo二光子カルシウムイメージングを用いてV1の方位性マップをprobeした研究。私は自分の発表と重なって聞けなかったが吉田君から内容を聞く。Morganeが後日、Yusteラボで詳解してくれるとのこと。Nature投稿中。
▼ 738.13 Pooラボ。二光子&Calein。CA1錐体細胞スパイン形態を観察。LTD誘導刺激でspineが小さくなる。これはCofilinを介している。Neuron
in press
▼ 775.6 G-Q Biラボ。アストロisland(約1mm径)の上に海馬神経細胞を2-3週間培養。パッチで刺激し、recurrentの副次応答を記録。こうした回路反響(reverberation)がなんとasynchronous
synaptic transmissionに依存している(厳密にはboostされる)というから、これはかなり面白い。
▼ PNAS Chemical and electrical synapses perform complementary roles in the synchronization
of interneuronal networks
Nancy Kopell and Bard Ermentrout
10月27日(水) サンディエゴ
▼ 学会5日目。今日も朝は雨だった。
▼ 昼は生理研の若田部先生と。
▼ 初日に買った140ドル以上もするEichenbaum&Davisの本が今日見たら半額になっていてちょーショック。
▼ 5時半にはホテルに戻り、VISAの連載の文章を書く。
▼ 853.5 歯状回神経回路のグラフ構造を調べた物。苔状線維の発芽でSmall World性が上がる一方で、過剰興奮性が生じるというデータが面白い。Scale-free特性はないというあたりは昨日(今はRIKENに移られた)深井先生と議論した内容と一致する一方で、機能回路と構造回路には決定的な差があることを示しているようにも思われる。
▼ 973.4 海馬培養細胞&αMED64。自発発火から機能結合を抽出して、グラフ特性を調べたらPower
Lawだった。つまり昨日私が発表したデータと同じ結果である。Nat Neurosciに投稿中。やっていること自体は420.15と似ている。
▼ 985.15 McCormickラボ。sensory inputによるUP stateの誘導。UP state中は興奮性よりも抑制性の入力がより細胞間でシンクロしているというデータは、まあそりゃそうだろう、と思いつつもやはり面白い。
▼ それから、Plenzラボの一連の「Neural Avalanches(神経雪崩)」の演題(970.1、970.2、970.3)も面白い。タイトルに「Synfire Chain」と追記されていたのはYuste論文の影響力か。
▼ NN Activation of FAK and Src are receptor-proximal events required for netrin
signaling W LI, ... K-L GUAN
▼ NN Netrin requires focal adhesion kinase and Src family kinases for axon outgrowth
and attraction G LIU, ... Y RAO
▼ Neuron State-Dependent Calcium Signaling in Dendritic Spines of Striatal Medium
Spiny Neurons A.G. Carter and B.L. Sabatini ホテルのネットからは読めないんだけど、これはUP&DOWN
stateでスパインのカルシウム動態が異なるという論文かな。だとしたら面白そうだ。
▼ Neuron Seizure-Induced Plasticity of h Channels in Entorhinal Cortical Layer III
Pyramidal Neurons M.M. Shah, A.E. Anderson, V. Leung, X. Lin, and D. Johnston 今回のSFNでもいくつか発表があったけど、Ihをブロックすると、基本的に、回路の興奮性は高まるようだ。これもてんかんでIhの活動が低下するという論文みたい。
▼ JN Monitoring Neural Activity and [Ca2+] with Genetically Encoded Ca2+ Indicators Thomas A. Pologruto, Ryohei Yasuda, and Karel Svoboda 安田さん、おめでとうございます。
▼ JN Calcium Release from Presynaptic Ryanodine-Sensitive Stores Is Required
for Long-Term Depression at Hippocampal CA3-CA3 Pyramidal Neuron Synapses Vivek K. Unni, Stanislav S. Zakharenko, Leonard Zablow, Anthony J. DeCostanzo,
and Steven A. Siegelbaum
▼ JN Distinct Roles for the Kainate Receptor Subunits GluR5 and GluR6 in Kainate-Induced
Hippocampal Gamma Oscillations Andre Fisahn, Anis Contractor, Roger D. Traub, Eberhard H. Buhl, Stephen
F. Heinemann, and Chris J. McBain
▼ JN Intrinsic Noise in Cultured Hippocampal Neurons: Experiment and Modeling Kamran Diba, Henry A. Lester, and Christof Koch
▼ JN Experience and Activity-Dependent Maturation of Perisomatic GABAergic Innervation
in Primary Visual Cortex during a Postnatal Critical Period Bidisha Chattopadhyaya, ... Huang まだ読んでないけどMKY先生どうぞ。
▼ JN Heterosynaptic Long-Term Potentiation of Inhibitory Interneurons in the
Lateral Amygdala Elizabeth P. Bauer and Joseph E. LeDoux まだ読んでないけどTMさんどうぞ。
▼ JN Cell Type-Specific Synaptic Dynamics of Synchronized Bursting in the Juvenile
CA3 Rat Hippocampus Ildiko Aradi and Gianmaria Maccaferri まだ読んでないけどSF君どうぞ。
10月28日(木)
▼ 朝、ホテルを経ち、NYの自宅についたのは夜だった。満月に映えるマンハッタンの夜景がこの世のものとは思えない幽玄ぶり。
▼ 機内ではMakse教授からもらったNatureに投稿中の原稿を読む(これは21日の日記に書いたもの)。感動で手が震えた。うーん、その内容をここに書けないのが残念だけど、でも簡単に言うと、complex
networkでEdgeのpower law分布におけるγ値が、なんとフラクタル次元と密接な関係にあるというビックリな内容。しかもきちんと数式化までしている。
▼ 今回のSFNで仕入れた本7冊。私がいま何に興味があるかバレバレだけど。
○ Biophysics of Computation(Christof Koch) これは名著として名高い。
○ Brain, Vision, Memory(Charles G. Gross) ネタ用。
○ Fundamentals of Computational Neuroscience(Thomas P. Trappenberg) ガヤ推薦。
○ Neural Networks and Brain Function(Edmund T. Rolls, Alessandro Treves, Edmund Rolls)
○ Neuronal Ensembles(Howard B. Eichenbaum, Joel L. Davis)
○ The Cerebral Code(William H. Calvin) 非常に風変わり。でも面白そう。
○ The Synaptic Organization of the Brain(Gordon M. Shepherd) 第4版しか持っていなかったので買い換えた。
▼ その他、残念ながら買えなかった本は以下の2冊
○ Pulsed Neural Networks(Wolfgang Maass, Christopher M. Bishop)
○ Spikes, Decisions, and Actions(Hugh R. Wilson)
▼ ちなみに、すでに持っている本の中でとりわけ素晴らしいなあと思うこの分野の私の推薦書は以下の2冊
○ Spikes(Fred Rieke, David Warland, Rob deRuytervanSteveninck, William Bialek) これはYusteラボの推薦書でもある。
○ Theoretical Neuroscience(Peter Dayan, L. F. Abbott)
▼ ついでにもう一冊挙げよう。Yusteラボ推薦書はもちろんこれ (爆)
○ Corticonics(Moshe Abeles)
▼ Science Harnessing Chaperones to Generate Small-Molecule Inhibitors of Amyloidβ
Aggregation Jason E. Gestwicki, Gerald R. Crabtree, and Isabella A. Graef
▼ Science Early-Life Blockade of the 5-HT Transporter Alters Emotional Behavior in
Adult Mice Mark S. Ansorge, Mingming Zhou, Alena Lira, Rene Hen, and Jay A. Gingrich
▼ Science Protein Kinase C Overactivity Impairs Prefrontal Cortical Regulation of
Working Memory S. G. Birnbaum, ... Arnsten フォルボールやらケレリスリンやらフェニレフリンやらを使って、前頭前野のPKC活性が高すぎると作業記憶が低下するというタイトル通りの内容。サルでもここまでの薬理実験ができるんだなあ。
10月29日(金)
▼ 午前、久々にラボに顔を出す。といってもほぼ全員SFNに参加していたので、とりわけ何がということはないのだが。
▼ Mol Pharmacolの論文の審査を済ませる。
▼ 午後はこんなリストも作ってみた。思ったより時間が掛かってしまった。。。うむ
▼ 森山さんから『進化しすぎた脳』についてEメールをいただいたので、僭越ながら返事をしてみる。すぐに返事が来る。ccで送信されていた担当編集者・赤井さんの言葉を借りれば「下手な喧嘩」。とりあえず、科学的な部分はきちんと返答する。
▼ 夜は「Strand Books」で来年のカレンダーを買って、「モーレルズ・ワイン・バー(Morrells Wine Bar)」というレストランへ。妻の友人が仕事でNYに来ているので3人で食事をする。彼は日テレ「プラスワン」の取材班で、今回は大統領選に合わせての渡米とのこと。第一線に飛び込むことの興奮を語ってくれた。
10月30日(土)
▼ 知り合いのご家族でノース・カロライナからNYに遊びにいらしているので、今日は一日、NYを案内する。NYに住んでいると、友人や知り合いが入れ替わり立ち替わりやってきて、ともすると自分の時間をかなり取られてしまうんだけど、今日はともに楽しかった。
▼ んで、夜は「れんげ(Lenge)」という和食店で。アメリカ国内からいらっしゃる友人達はNYの和食屋に連れて行けば大抵は感激してもらえる。
10月31日(日)
▼ サマータイムがAM2時に終わった。サンディエゴ帰りの“時差ボケ直し”にはこの一時間の差はとても助かる。
▼ 一日、部屋や文献の整理など。
▼ 夜は薫さんを家に呼んで夕食。実はNYで会うのは今日が初めて。
▼ 朝日出版社からの情報: 昨日のbk1売り上げランキング ── 『進化しすぎた脳』が、「冬ソナ」や「電車男」をおさえ、堂々の第一位! やったね&びっくり。つうか、そんなことよりもっと重要な問題は本の内容っすね、はい。これは読者の審判を待たないと。
▼ 昨日と今日は森山さんからとても好感の持てる返事をもらった。
▼ 「cerebrate」という英単語を今まで知らなかった。神経科学に携わる者として恥ずかしい。英和辞典によれば「大脳が働く。転じて“考える”の意味」と書かれているんだけど、日本人はこんな感じで奇妙な使い方をする。ふと我が身を振り返ると、あまり笑えない話かも。あ、ちなみに「Can
you cerebrate?」って言ったら「あんた、おつむ大丈夫?」っていう意味になるのかな、はて。
(2004年)
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