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1月1日(土) コスタリカ
▼ よく寝た。起床したら体調はすこぶる良い。
▼ 一日レンジャーと共に「コルコバード国立公園」を探索する。船でポイントまで移動して、海岸から山に入る。鳥や動物を探しながら、行き着いた滝で泳ぐ。
▼ 陽気に歌うオオハシ、闊達に跳ねるイルカ、色鮮やかなコンゴウインコの群れ、泳いだ滝壺のすぐ下流で日向ぼっこをしていた巨大なクロコダイル(これにはびっくり)、せっせと木こりに勤しむキツツキ、忍者のように水面を走るバシリスク(トカゲの一種)、悠々と舞うペリカン。木々を遊びめぐるサルたち、可憐に飛び交うハチドリ、葉切りアリの長い行列、木陰でまどろむフクロウやナマケモノ、そして何より「これぞジャングル!」といわんばかりの絵に描いたような熱帯雨林。極彩色の鳥や虫や花のシンフォニー。散歩中にスコール。でも傘は不要。うっそうと繁った密林が我々を守ってくれる。自然 ─ 感動
コルコバードの抜粋写真はこちら
▼ ただ、あえてケチをつけるとしたら、5メートルも歩けば何らかの動物に出会うガラパゴス諸島よりも、動物のエンカウント率が低いことかな。そして、ガラパゴスと違って動物たちは人間がくると逃げる(これが当たり前か…)。だから目が慣れていないと見つけるのが難しい。あ、でも、これは贅沢な要求だ。だって動物園の檻のなかでさえ、そこに動物がいることがわかっていても、なかなか探すのは大変だもんな。
▼ 夜、もちろん今日も早く寝る。こういう土地に来るといつもオマケでついてくるんだけど、すっげえ満天の星。冬なのに天の川が余裕で見える。


1月2日(日) コスタリカ
▼ 昼はコルコバード公園から10kmほど沖にある「カニョ島(自然保護区)」に渡って、シュノーケリングなどをしながら一日のんびり過ごす。青空にサンゴに熱帯魚。水も透明度が高くて楽しいんだけど、でも、クラゲに10ヶ所以上は刺された。
▼ 私は普段から部屋で音楽CDを掛けている。旅行中も持参したパソコンからクラシック音楽を鳴らしている。今日、ふと気づいたのだが、そういえばこの3日間、一度も音楽を聴いていない。そうなのだ。ジャングルの中のロッジでは、鳥や虫たちのハーモニーがなんとも心地よい。


1月3日(月) コスタリカ
▼ 日の入りと共に床に就いて、鳥の鳴き声に起床する、そんな自然と一体となった生活に別れを告げて、サンホセ市にもどり、そこから車で「モンテベルデ自然保護地区」へ(モンテベルデはコスタリカではもっとも知られた土地のひとつだけど実は国立公園ではない)。
▼ 今朝までいた灼熱の熱帯雨林とはちがって、モンテ・ヴェルデ(“緑の山”の意)という名称が示すとおりのエメラルド色に染まった熱帯雲霧林。海抜が高く肌寒い。
▼ がたがたの砂利道を車で少しずつ登っていくと、そこは霧の中。“雲霧林”とはよく言ったもので連日濃霧とのことで、それがこのジャングルの神秘性を引き出している。道中、写真を撮りながらのんびりだったせいか、着いたらもう夕方だった。虹が美しい。夜には霧だけでなく、雨や風も強まる。
▼ ロッジの近くにあった「フロッグ・ガーデン」という施設でコスタリカ産のカエルたちを見る。
▼ 夜はSF君の論文。


1月4日(火) コスタリカ
▼ 午前は自然保護地区をガイドとともに探索。午後はスカイウォーク(森林に掛けられたつり橋)を個人で散策。
▼ さすがにガイドは動物を見つけるのがうまい。今日もナマケモノやアルマジロやタランチュラなどさまざまな動物に出会ったが、なんといっても、ここモンテベルデ地区は鳥類が豊富。いろいろな鳥が観察できる。
▼ そして、まさか! とは思ったのだが、今日、意外にも、この旅行の二つ目にして最大の目的が達成されてしまった(一つ目の目的はこちら。それは“幻の鳥”といわれる「ケツァール(quetzal)」を見ること。トレールを歩いていたら見つけてしまった。しかも2回も。なんと美しい鳥だろう。尾羽まで入れると1メートルはあるだろうか。かなり大きい。目はパッチりで嘴は小さめ。羽は輝かんばかりの鮮やかさ。遠くから見ただけなのだが、その気品ある姿には神々しささえ漂う。これは実物を見ないとわからないだろう。そういえば、この日記でも一年位前に「ケツァールが見たい!」と書いたことがあった(こちら)。夢が叶った。じーん。感慨深い。
▼ モンテヴェルデは仮に動物に出会えなくても「雲霧林」の景観自体が素晴らしい。あまりに高い湿度のために、木々の幹がコケやシダやランなどの寄生植物で覆われている。だから森林一面が鮮やかな緑色に染まる。美しい。心安らぐ風景。こんな雰囲気だ(写真)。一本の木に数百から数千もの着生植物が付着していることも珍しくないという。
▼ コスタリカには多種のハチドリが住んでいる。モンテベルデも例外ではない。今日もたくさん見かけた。彼らはすばしっこくてなかなかカメラで捉えるのは難しいけれど、なんとか良いショットを撮ろうと、今日は250枚くらいハチドリに費やした。空中静止(ホバリング)している瞬間がシャッターチャンスだ。下手な鉄砲数打うちゃ当たる。数枚ほど気に入った写真が撮れた。そのうちベストの二枚の写真を公開(アングル調整のトリミングしています)。
▼ 夜はSF君の論文。
PNAS θ frequency stimulation up-regulates the synaptic strength of the pathway from CA1 to subiculum region of hippocampus Yan-You Huang and Eric R. Kandel MTさん用
▼ 今号のJ Physiolは「NEURONS AND NETWORKS」の特集。目を通す価値がある。


1月5日(水) コスタリカ
▼ 午前、ロッジの中に設置されたキャノピーというターザンのようなスポーツを楽しむ。
▼ 今日から最終日までは日本人ガイドの下村昌也さんに案内してもらえる。やはり複雑な動植物の種類や生態の話は日本語で聞くのが一番だ。
▼ 昼前に下村さんと合流して、午後はアレナル地区へ移動する。道中はこんな感じの牧歌風な砂利道(や穴ぼこだらけの舗装路)を延々と4時間。
▼ アレナル火山は常に噴火している。それを間近で見られるという世界でも珍しい名所。宿泊したホテルの部屋窓からもその様子が眺められる・・・はずだったのだが、残念ながら今日は山頂が曇っていた。というか、ここは雲がかかりやすくて運が良くないと噴火は見られないそうだ。そうと知っていても多くの観光客が「アレナル火山国立公園」にやってくる。その目的は、そう、山麓に温泉が湧いているから。タバコン温泉には川の傾斜を利用して作られた規模の大きなスパ・リゾートがある。私も訪問。ここは確かに見事な作りだ。旅の疲れを癒す。
▼ TY君の論文の返事が来た。改訂せねば。
Nature A mechanism for impaired fear recognition after amygdala damage Ralph Adolphs, Frederic Gosselin, Tony W. Buchanan, Daniel Tranel, Philippe Schyns & Antonio R. Damasio ダマシオ
Nature β-Lactam antibiotics offer neuroprotection by increasing glutamate transporter expression Jeffrey D. Rothstein et al.
Nature Linguistic perception: Neural processing of a whistled language Manuel Carreiras, Jorge Lopez, Francisco Rivero & David Corina
Neuron NMDA Receptor-Dependent Activation of the Small GTPase Rab5 Drives the Removal of Synaptic AMPA Receptors during Hippocampal LTD T.C. Brown, I.C. Tran, D.S. Backos, and J.A. Esteban
Neuron PerisomaticFeedback Inhibition Underlies Cholinergically Induced Fast Network Oscillationsin the Rat Hippocampus In Vitro E.O. Mann, J.M. Suckling, N. Hajos,S.A. Greenfield, and O. Paulsen SF君用
Neuron Dendritic Spine Heterogeneity Determines Afferent-Specific Hebbian
Plasticity in the Amygdala
 Y. Humeau, C. Herry, N. Kemp, H. Shaban, E. Fourcaudot, S. Bisseie, and A. Luthi 必読
Neuron DirectionSelectivity of Excitation and Inhibition in Simple Cells of the Cat PrimaryVisual Cortex N.J. Priebe and D. Ferster 必読
Neuron PhaseLocking of Single Neuron Activity to Theta Oscillations during Working Memory inMonkey Extrastriate Visual Cortex H. Lee, G.V. Simpson, N.K.Logothetis, and G. Rainer SF君用
JNS A Functional Interaction of Sodium and Calcium in the Regulation of NMDA Receptor Activity by Remote NMDA Receptors Wen-Kuan Xin, ... Xian-Min Yu
JNS Quantal Size Is Independent of the Release Probability at Hippocampal Excitatory Synapses Agota A. Biro, Noemi B. Holderith, and Zoltan Nusser
JNS Activity Dependence of Cortical Axon Branch Formation: A Morphological and Electrophysiological Study Using Organotypic Slice Cultures Naofumi Uesaka, Satoshi Hirai, Takuro Maruyama, Edward S. Ruthazer, and Nobuhiko Yamamoto 山本ラボ
JNS Orientation Selectivity without Orientation Maps in Visual Cortex of a Highly Visual Mammal Stephen D. Van Hooser, J. Alexander F. Heimel, Sooyoung Chung, Sacha B. Nelson, and Louis J. Toth


1月6日(木) コスタリカ
▼ 朝から「カーニョ・ネグロ野生保護区」をめぐる。ボートにのって川や湿地帯の動植物を探すのだが、いやはや、参った、ここもまたまたスゴいのだ。動物や鳥の宝庫だ。デジカメの電源を切る暇がないくらい、次から次へとさまざまな生き物に出会う。感動。
▼ 夕方は「アレナル国立公園」にいったん戻り、そこから「ブラウリオ・カリージョ国立公園」の近くまで移動。サラピキのロッジで夜泊。
アレナルとカーニョ・ネグロで見た生き物たち(抜粋)
▼ 夜はSF君の論文。
Science Vesicle Endocytosis Requires Dynamin-Dependent GTP Hydrolysis at a Fast CNS Synapse Takayuki Yamashita, Toshihide Hige, and Tomoyuki Takahashi 高橋研
▼ 今週のF1000: PNAS Dysregulation of the fibroblast growth factor system in major depression Evans SJ, Choudary PV, ..., Jones EG, Akil H 
▼ 今週のF1000: BN Asymmetries in the hippocampus and amygdala of chimpanzees (Pan troglodytes) Freeman HD, Cantalupo C, Hopkins WD


1月7日(金) コスタリカ
▼ 午前は「セルバ・ベルデ・ロッジ」の敷地や「ラ・セルバ生物研究所」の密林をめぐる。2種類の矢毒ガエルに出会えたのが薬学部の人間として、やはり、嬉しい。
▼ “歩く木”(根足を持っていて本当に歩く!日光を求めて速度20年に1mくらいだそう)や“大木の幹を登る植物”(日当たりのよい高い位置まで登っていって葉を開く着生植物)などの生態を説明していただく。ジャングルは面白い、ほんと。
▼ 午後は「セロ・デ・ラ・ムエルテ国立公園」の近くまで移動。サン・ヘラルドという谷間の街に泊る。ロッジの部屋がとても洒落ていた。
▼ 夜は下村さんの望遠鏡で天体観察。M42星雲やプレアデス星団や土星など。周囲にはホタルも飛び交い優雅。
今日見た動植物たち(抜粋)
NRN INVASIVE RECORDINGS FROM THE HUMAN BRAIN: CLINICAL INSIGHTS AND BEYOND Andreas K. Engel, Christian K. E. Moll, Itzhak Fried & George A. Ojemann


1月8日(土) コスタリカ
▼ 朝早く起きてサベグレ川沿いのリンゴ農家の畑にケツァルを探しに行く。野鳥愛好家たちが憧れるこの“幻鳥”を探索することが旅行の最後の楽しみであった。ところが、どっこい、これが意外なほどすぐに見つかる。しかも、“ありがたみ”が薄れるほど(汗)たくさんいるではないか。オスだけでも5匹は見た。それも最短数メートルの至近距離で。写真も150枚以上撮ってしまった。にしても、見よ、この気品(写真はこちら)。まさに空を舞う宝石。いやあ、こちらまで心が洗われる美しさだ。
▼ ロッジにもどり、朝食を取り、周囲を少し探索して、サンホセに戻る。途中、カルタゴ大聖堂に寄る。
▼ これまでご一緒してくださったガイドの下村さんと別れる。
▼ サンホセ市では国立博物館や国立劇場をめぐる。民芸品通りで土壺を買う。食事はエル・プレルボへ。
▼ 夜、ようやくネットにつなげることができた。さすが首都。9日ぶりにこの日記を更新。


1月9日(日)
▼ 昼の便でコスタリカを経ち、夕方にニューヨークに戻る。自宅に着いたら夜だった。さすがに寒いが、でも、NYにしては暖冬といって良いかもしれない。
▼ これで15日を費やした大旅行「ガラパゴス&コスタリカ ─ 自然を巡る旅」が終わった。ガラパゴスは意外と面白かった。コスタリカは予想通り面白かった。圧巻。
▼ こうした旅はショッピングや文化や遺跡といった人為とはほぼ無縁。人の営みよりももっともっと昔から続いている自然。皆さんが本当の自然を知りたい、触れてみたい、感じてみたいと思ったのなら、ぜひとも(とくにコスタリカ旅行を)推薦したい。損はしないと思う。とくに私のように生物系研究に携わる人だったら動物が野生としてどういう生活をしているのかを知っておくのは悪くないと思う。この意味でコスタリカは自分の身をそれほど危険にさらすことなく“本物”に出会える稀有な国である。地区によってちょっとした寒暑はあるけれど全般的に気候は快適。蚊も少ない。唯一の不満は通貨コインがばかデカいことかな。ポケットが重たい。
▼ ちなみに私が今回コスタリカでお世話になったのはさくらツーリスト。この会社を主催する下村昌也さんご本人にガイドいただいた。一見すると髭ヅラで怪しげな人なんだけど、実のところ、自然への造詣が深く、気さくでとても気の利く方。安心して旅をさせていただいた。この場を借りてお礼を言いたい。(ジャングルの中で妻と3人で一緒に撮った写真は「地球の歩き方・中米」の次号に掲載されるのだそう、これも楽しみ)
▼ ホームページでこんなものを公開した。その名も「癒しの壁紙」。いま私は「コルコバード壁紙1」を使っている。穏やかな翠色に囲まれたい方には是非どうぞ。ちなみに、この2週間で撮影した写真は3500枚以上。それだけカメラを向けたくなる生物や景色が多かったということかな。
▼ 朝日新聞に『進化しすぎた脳』の天外伺朗さん(=ソニーの土井利忠さん)による書評が載ったみたいで、オンライン書店amazonとbk1でともに総合ランキング第一位になっている。嬉しい。「単に脳に関する興味を満たすだけでなく、人間とは何か、教育とは何かを考えさせる一冊だ」とのこと。つまり“授業”として評価していただけたみたいだ。
JNP Modeling Sleep and Wakefulness in the Thalamocortical System Sean L. Hill and Giulio Tononi NRNで取り上げられている。これは丁寧に読まねば。SF君もぜひ。


1月10日(月)
▼ 午前、Glosterの研究報告。Neuron誌に投稿する研究内容。個人的にはとても面白いんだけど。
▼ その後、J Neurobiolの論文を再審査。これは受理。
▼ 昼は実験。ひさびさなのにうまくいった。
▼ コスタリカで会った日本人のご夫婦がフライト乗り継ぎでNYに寄っているとのこと。夕食をご一緒する。適当に入ったイタリアン。けっこう美味しかった。
▼ 夜、SF君の論文の仕上げ。投稿はSF君に任せる。Neuron誌へ。Peer Reviewに回って欲しいなあ。
▼ 『進化しすぎた脳』の第3刷決定。1万部増版。
JNB A two-phase growth strategy in cultured neuronal networks as reflected by the distribution of neurite branching angles Orit Shefi, Sharon Golebowicz, Eshel Ben-Jacob, Amir Ayali


1月11日(火)
▼ 午前、総説の図を作成
▼ 午後は実験準備とデータ整理。
▼ 夜は年末のPRIDEとDynamite!!のVTRを見る。総合格闘技が好きなので普段はPRIDEのほうに惹かれるんだけど、今回はDynamite!!のほうが圧倒的に面白かったかな。山本美憂&聖子姉妹らが応援している様子も何気によかった(爆)
PNAS Stargazin is an AMPA receptor auxiliary subunit Wim Vandenberghe, Roger A. Nicoll, and David S. Bredt


1月12日(水)
▼ 一日データ整理。Sequenceの間隔がベキ則にしたがっていることを発見。
▼ 夕方からニューアーク空港へ。
JNS Activity-Dependent Presynaptic Regulation of Quantal Size at the Mammalian Neuromuscular Junction In Vivo Xueyong Wang, ... M. Rich
JNS Altered Inhibitory Prefrontal Circuitry in Schizophrenia Takanori Hashimoto,... David A. Lewis Relationship of Brain-Derived Neurotrophic Factor and Its Receptor TrkB to
PNAS The neocortical microcircuit as a tabula rasa Nir Kalisman, Gilad Silberberg, and Henry Markram 昨年マークラム本人のTalkで聞いた内容。錐体細胞同士はデフォルトですべてのペアがシナプス結合できるチャンスがある。にもかかわらず選らばれた相手同士だけでSparseに結合している、というのが結論。ちなみにタビュラ・ラサ(タブラ・ラサ)とはロックが提唱した概念で「まだ何も書き込まれていない白紙の状態」のこと。哲学的にはそれほど強力な概念ではなかったが、20世紀芸術でその理念が開花した。


1月13日(木) モロッコ
▼ 朝、ロンドンにつき、そこを経由して夕方にモロッコのマラケシュ市に入る。
▼ 「メナラ庭園」に寄り、メジナ(旧市内)に入る(世界遺産)。「クトゥビアの塔」を横目に見ながら、「ジャマ・エル・フナ広場」でランプシェードを5つ購入。この広場はいろいろなものを売っているだけでなく、コブラ使いや格闘トトカルチョなどがあって面白い。街ゆく人々の活気と力強さに圧倒される。
▼ ホテルはメジナにある“リャド(リヤド)”に。リャドとは旧豪邸を宿泊施設にしたもの。
Cell GSK-3beta Regulates Phosphorylation of CRMP-2 and Neuronal Polarity Takeshi Yoshimura, Yoji Kawano, Nariko Arimura, Saeko Kawabata, Akira Kikuchi, and Kozo Kaibuchi
Science Semaphorin 3E and Plexin-D1 Control Vascular Pattern Independently of Neuropilins Chenghua Gu, ... David D. Ginty


1月14日(金) モロッコ
▼ 朝、ジャマ・エル・フナ広場で買い物。「バイア庭園」を駆け足で見て、そのままフェズへ移動。フェズまでは600km。高速道路なんてないので8時間かかる。途中、ベニ・メラルで昼食をとり、フェズに着いたのは夜7時くらい。
▼ アズルー周辺はアトラス山脈の中腹で道路わきには雪が。モロッコとは言え、さすがに冬だ。
▼ やはりメディナの中にあるリアド・サラに泊。すばらしいイスラム風内装にびっくり(写真はこちら)。
▼ 夜は予測アルゴリズムのパラメーター設定。
N A role for adult neurogenesis in spatial long-term memory J.S. Snyder, N.S. Hong, R.J. McDonald and J.M. Wojtowicz
JNP Dopamine Enhances Spatiotemporal Spread of Activity in Rat Prefrontal Cortex Susanta Bandyopadhyay, Carlos Gonzalez-Islas, and John J. Hablitz
JNP Synaptically Recruited Apical Currents Are Required to Initiate Axonal and Apical Spikes in Hippocampal Pyramidal Cells: Modulation by Inhibition S. Canals, L. Lopez-Aguado, and O. Herreras
JNP Functional Properties of Fast Spiking Interneurons and Their Synaptic Connections With Pyramidal Cells in Primate Dorsolateral Prefrontal Cortex Guillermo Gonzalez-Burgos, Leonid S. Krimer, Nadya V. Povysheva, German Barrionuevo, and David A. Lewis
JNP Stochastic Properties of Synaptic Transmission Affect the Shape of Spike Time-Dependent Plasticity Curves Harel Z. Shouval and Georgios Kalantzis
JNP A Point Process Framework for Relating Neural Spiking Activity to Spiking History, Neural Ensemble, and Extrinsic Covariate Effects Wilson Truccolo, Uri T. Eden, Matthew R. Fellows, John P. Donoghue, and Emery N. Brown
JNP Light-Directed Electrical Stimulation of Neurons Cultured on Silicon Wafers Artem Starovoytov, Jung Choi, and H. Sebastian Seung


1月15日(土) モロッコ
▼ 一日、フェズのメディナ(旧市街)をガイドとともに練り歩く。ガイドがいないと迷うこと間違いなしのスゴい迷路だ。ラクダの皮椅子、ヤギの絨毯、それにフェズ陶器などを買う。
▼ フェズのなかでも「フェズ・エル・バリ」と呼ばれるメディナ地区は8世紀から続く由緒ある歴史都市(世界遺産)。ここはまさに喧騒と混沌の世界。人々は力強く生きている。写真はこちら
▼ 夜は予測アルゴリズムのパラメーター設定続き。
▼ 今週のF1000: Neuron Synapse to Nucleus Signaling during Long-Term Synaptic Plasticity; a Role for the Classical Active Nuclear Import Pathway. Thompson KR, Otis KO, Chen DY, Zhao Y, O'dell TJ, Martin KC
▼ 今週のF1000: EJN Rapid functional plasticity in the primary somatomotor cortex and perceptual changes after nerve block Weiss T, Miltner WH, Liepert J, Meissner W, Taub E


1月16日(日) モロッコ
▼ フェズからカサブランカへ移動。道中、ローマ遺跡「ヴォルビリス」(世界遺産)、聖都ムーレイ・イドリス、古都メクネスのメディナ(世界遺産)、首都ラバトのメディナに立ち寄る。
▼ 夜はカサブランカのメディナをちょっと散歩。


1月17日(月)
▼ 朝、カサブランカを経ち、飛行機が遅れたのもあり、NYについたのは夜。
▼ 機中ではデータ解析など。


1月18日(火)
▼ 一日、データ整理。図を作りながら。
▼ 私の担当のLab Meetingが今月31日から急に24日になった。って来週じゃんか。。。とりあえず進行中のデータを出せばいいかなあ。
PNAS Microstimulation of the superior colliculus focuses attention without moving the eyes James R. Muller, Marios G. Philiastides, and William T. Newsome
PLoS Neuronal Encoding of Texture in the Whisker Sensory Pathway Ehsan Arabzadeh, Erik Zorzin, Mathew E. Diamond


1月19日(水)
▼ 今日は−10℃以上まであがったみたい。んで、暖かくなると、まあ大抵そうなんだけど、雪が降った。
▼ 時差ボケで早く目覚めてしまう・・・。どうも私は時差に弱い。早朝、「実験医学」用の総説を編集者に送る。
▼ 一日、データ整理。昼はRafaと論文の構想について議論。Rafaは私のテーマに関する提案を紙3枚分もリストアップしていた。ボスの熱意が見えるのはとても嬉しい。私も帰国したら、まずはこういうところから見習いたい。
Molecular Biology of the Cell(第4版)がPubMed BOOKで検索できるようになった。
Nature An autoregulatory circuit for long-range self-organization in Dictyostelium cell populations 323 SATOSHI SAWAI, PETER A. THOMASON & EDWARD C. COX
Neuron Spatial Memory in the Rat Requires the Dorsolateral Band of the Entorhinal Cortex H.-A. Steffenach, M. Witter, M.-B. Moser, and E.I. Moser
Neuron Transient and Persistent Dendritic Spines in the Neocortex In Vivo A.J.G.D. Holtmaat, J.T. Trachtenberg, L. Wilbrecht, G.M. Shepherd, X. Zhang, G.W. Knott, and K. Svoboda
Neuron Bidirectional Synaptic Plasticity Regulated by Phosphorylation of Stargazin-like TARPs S. Tomita, V. Stein, T.J. Stocker, R.A. Nicoll, and D.S. Bredt
JNS Dissociating Barrel Development and Lesion-Induced Plasticity in the Mouse Somatosensory Cortex Alexandra Rebsam, Isabelle Seif, and Patricia Gaspar
JNS Endogenous Ca2+ Buffer Concentration and Ca2+ Microdomains in Hippocampal Neurons Andreas Muller, Maria Kukley, Pia Stausberg, Heinz Beck, Wolfgang Muller, and Dirk Dietrich
JNS Controlling Bursting in Cortical Cultures with Closed-Loop Multi-Electrode Stimulation Daniel A. Wagenaar, Radhika Madhavan, Jerome Pine, and Steve M. Potter 必読


1月20日(木)
▼ 今日もデータ解析。最近ずっと大学のPCと自宅のPCを昼夜問わずフル活動。ようやく終わりが見えてきたので午後は月曜のプレゼンに備えて、パワーポイントを作り始める。
▼ 日本に帰ったら住む場所をどこにしようかとボチボチと考え始める。もちろん賃貸マンション。どこら辺がコストパフォーマンスが良いのだろうか。いまのところ葛西周辺にしようかという話になっている。
N A test of the reverberatory activity hypothesis for hippocampal ‘place’ cells E.I. Moser, M.-B. Moser, P. Lipa, M. Newton, F.P. Houston, C.A. Barnes and B.L. McNaughton


1月21日(金)
▼ 一日中スライド作り。だいたい終わる。発表練習もしないと。
▼ 夜はマンション探し。国際電話も何本か。
▼ 昨日、「日本経済新聞」の夕刊にも『進化しすぎた脳』の書評が載った。これで4大紙(朝日・読売・毎日・日経)制覇ということになる。その影響か第4刷1万冊を増刷することになった。これに便乗して『海馬』も十八刷(五千部)決定。嬉しい。
▼ 今週のF1000: NC Efficient coding of time-relative structure using spikes. Smith E, Lewicki MS
(2005年)


1月22日(土)
▼ 外は大雪。外出は控える。
▼ 午前はマンション探しの続き。候補がだんだん絞れてきた。新しい生活の場。、帰国するのは残念だけど、別の意味でまた楽しみでもある。
▼ 午後は月曜の発表の準備。


1月23日(日)
▼ 今日も雪。午後には止んだ。昨日今日で結構積もった。
▼ 明日の発表練習を3回。
▼ 連載の文章も仕上げる。


1月24日(月)
▼ 午前、私の研究報告の担当。最近のOregon Greenのデータで予測アリゴリズムを当てはめて、最適化すると予測率が40%を超えることがわかったので、後半にはそれを取り上げる。この内容は人によって賛否両論だったのでちょいと面喰らったけど、発表後、「Neuronに投稿しよう。良い論文になるだろう。そして何より、君がうちのラボに来てくれたのが改めて嬉しい」とRafaが言ってくれたのが救い。んで、明後日もまたRafaとMeetingになった・・・期待がかかると仕事量もプレッシャーも増える。もちろん良いことである。
▼ 午後はデータ解析の続き。朝もらったコメントに基づいてさらなる検証用のプログラムを書く。
▼ 夜は久しぶりにカーネギーホールへ。今年初コンサート。今日はヤルヴィ(Jarvi)指揮シンシナティ交響楽団。ラルス・フォークト(Lars Vogt)の独奏でグリーグのピアノ協奏曲。フォークトを聴くのはおそらく実演&録音を通じて今日が初めて。彼の演奏はすごく余裕がある。けっして強引に鍵盤を叩きつけるようなことはしないし、演奏に極度に感情移入することもない。逆に言えば「あっさりしている」となるのだが、しかし、個性的なルバートが光り聴いていて飽きない。さすがは若手世代を担うピアニストと言われているだけある。
▼ あと、今日気づいたこと。グリーグのピアノ・コンチェルトはかつては大好きな曲だった。自分が34歳となった今改めて聴いてみると、曲作りの若さ(青さ)がちょっと気になる。若さと勢いで成り立っている曲というのが手に取るようにわかって、なんだか今までとは聴こえ方が変わっていた。青臭くてぎこちない曲って、まあ、他にもいっぱいあるんだけど、でも、他の作曲家、たとえば、マーラーやシューマンの若かりし頃の“未熟さ”のほうが私は好きかも。年をとると好みは変わるものだ。
▼ 帰宅後は久々にワイン&チーズ。


1月25日(火)
▼ 大寒波が続いている。予報によれば今度の木曜日が今年一番の寒さになる模様だ。
▼ 朝、大学に行ったら昨日パソコンに仕掛けた計算が終わっていた。ちょっと驚く結果に。とっても不思議なのでパラメータをイジって再度確認してみたけれども、しかし、また同じ結果に。うーん、これが事実だったらそれはそれで面白いんだけど。。。と思い、プログラムを細かく見直してみたらやはり計算がちょいと間違っていた。手計算でやり直す。昼過ぎにこのデータの図が完成する。
▼ 午後は明日のMeetingと実験の準備。
▼ 出版社の方と「ありのまま」についてちょっと話題になった。「脳は独りよがりだから“ありのまま”を見ていない」という話。同じ線分なのに長さがちがって見えてしまう、いわゆる「目の錯覚」などはとてもよい例。
▼ 私の個人的な定義では“ありのまま”とは「ニュートン力学の加減乗除則で矛盾がない時空間」 という意味。それが世間で言う「ありのまま」でもあるかと。 んで、脳は「ありのまま」には見ていないのは明らか。実際、目の錯覚は誰でも経験したことがあるだろう。普通の人は「それは錯覚だ」で片付けてしまうだろうが、私のようなちょいと“唯脳論”チックな人には「それは脳が間違っているんじゃなくて、ニュートン力学が間違っているんじゃないの」となる。脳が「片方の線分が長い」と解釈するんだったら、「錯覚が生じる周囲のニュートン空間は“ゆがんでいる”として物理学は(補正して)数式化すべきだ!」となってくる。もちろん過激な話だけど。
▼ もう少し考えてみよう。去年、「天動説でも正しいんじゃいの」という話を日記に書いたとき(5月5〜10日あたりの日記)、物理系の研究に携わる読者から「天動説も数学で記述できる。ただ式が複雑になってしまう。一方、地動説では数式がはるかに簡単だから、世間では地動説が“正しい”となっている。いずれにしても相対的な問題に過ぎない」という主旨の返事ももらった。その通りだと思う。地動説が信じられているのは、単にユークリッド的な記述法においてたまたま地動説の数式が“ヒトの脳”にとってより理解しやすかったからにほかならない。
▼ これと同じことで、「ニュートン力学」は広く一般人に理解されやすい物理学系であって、錯覚による歪みまで考慮したら数式が複雑になってしまう。ただ、それだけのことなのだ。そして、人間の脳がスムーズに理解できるようにもっとも巧みに「工夫された(≒捻じ曲げられた)説」が世間的に“正しい”と支持される。
▼ ところが世間の人々はこう言う ── ヒトの視覚は錯覚を起こす。なぜそれが錯覚とわかるかというとニュートン力学の座標系に矛盾するから。そして結論は「脳は間違いを起こしやすい」となる。歪んでいるのはニュートン力学のほうかもしれないという疑いすら持たない。いかに「ニュートン教」という“宗教”が無防備に蔓延しているかがわかる。
▼ これこそが私は「科学は宗教だ」という根拠でもある。
▼ すべての科学は目前の現象を記述するために「簡略化による近似(≒捻じ曲げ)」という戦略をとっている。そう、あくまでも“近似”に過ぎない。このことを忘れてはいけない。それゆえに、どの説が正しいかなんて簡単には言えないし、実のところ、そんなことなどわからない、というのが本当ではないだろうか。
PNAS Visual speech speeds up the neural processing of auditory speech Virginie van Wassenhove, Ken W. Grant, and David Poeppel ネタ
PNAS Natural-scene geometry predicts the perception of angles and line orientation Catherine Q. Howe and Dale Purves 目の錯覚のネタ
PNAS The Muller-Lyer illusion explained by the statistics of image-source relationships Catherine Q. Howe and Dale Purves これも錯視ネタ
TINS Hippocampal sequence-encoding driven by a cortical multi-item working memory buffer Ole Jensena and John E. Lisman
TINS Memory retention - the synaptic stability versus plasticity dilemma Wickliffe C. Abraham and Anthony Robins
TINS Similarities between actions of estrogen and BDNF in the hippocampus: coincidence or clue? Helen E. Scharfmana, ... Neil J. MacLusky


1月26日(水)
▼ 午前、RafaとMeeting。論文のストーリーが完成。
▼ 午後は実験。あまりうまくいかないので条件を変えよう。夜は明日の実験の準備。
▼ いつもより遅く帰宅。
▼ 帰国してから糸井重里さんに会う日が決まった。4月2日14時。ここでの対談が『海馬』を文庫本化するときに追加掲載される予定。
▼ 「脳って、プログラマブルなCBICから構成された、でかいFPGAみたいなもん」という森山さんの意見、半分は賛成。ただし、FPGAってやつは外部の制御(もしくはプログラマー、もしくは観測者)によって回路を再編成するわけで、一方、脳は自主的に自己構築をするわけだから、本質的な部分ではけっこう異なっていると思う。
JN Number and Density of AMPA Receptors in Single Synapses in Immature Cerebellum Jun-ichi Tanaka, ... Ryuichi Shigemoto お、論文になりましたね。この内容。
JN Target-Specific Regulation of Synaptic Amplitudes in the Neocortex Junryo Watanabe, Andrei Rozov, and Lonnie P. Wollmuth
JN Angular Path Integration by Moving "Hill of Activity": A Spiking Neuron Model without Recurrent Excitation of the Head-Direction System Pengcheng Song and Xiao-Jing Wang


1月27日(木)
▼ 予報どおり、さすがに寒いな。-15℃。でも去年(こちら)のほうがもっと寒かったからあまり気にならない。
▼ 実験、今日もうまく行かず。明日は若いラットで試してみよう。
▼ 午後は論文の仕事をしていたのだけど、なんとなく時間が過ぎてしまってあまりはかどらなかった。
▼ 夜はRXY君の論文。今週から手をつけているがそろそろ本腰を入れる。
▼ 実家から送られてきたVTRを見る。先日のNHK-BSで放送された「週間ブックレビュー」で出演者の天野祐吉さんが『進化しすぎた脳』を取り上げてくださったのだ。天野さんや共出演者の檀ふみさんが本を通じて“感銘”を受けてくださったのがよく伝わってきた。とっても褒めて下さって、見ているこちらとしてはかなりくすぐったい。
▼ こうしてマスコミで取り上げてくださるので、『進化しすぎた脳』は刷ってもすぐに書店の注文で在庫がなくなってしまうようで、早速第5刷が決定した。今度は20,000部の増刷だ。今ではオンライン書店だけでなく、実際の本屋さんでもあちこちでベストテン入りしているそうだ。
▼ 3月末に帰国したら住む予定のマンション。妻のお母様がわざわざ会社の半休を取って下見に行ってくださった。たくさんのデジカメ写真をお送りいただいた。ここでほぼ決定かな。週末には友人にも見て行ってもらう予定。
Nature Self-similarity of complex networks Chaoming Song, Shlomo Havlin & Hernan A. Makse これまでにも何度も日記に書いてきたもの。すばらしい論文。


1月28日(金)
▼ 朝から実験。昨日うまく行かなかった理由はわかったけど、今日はうまく行かないのはまた違う理由みたいだ。。。うむ。
▼ 午後はRXY君の論文。
▼ 夕方はRobertoの文献紹介。取り上げられたのはこちら
▼ 夜はカーネギーホールへ。今日はコンサートではなく、ピエール・ブーレーズがロンドン交響楽団を率いて、20世紀音楽におけるエポック・メイキングになったストラヴィンスキーの代表作『春の祭典』を解説するという特別イベント。前半が解説で、後半は全曲を演奏する。
▼ 私は『春の祭典』(略して『春祭(はるさい)』とも呼ぶ)が好きで、今日のブーレーズ指揮のCDを初めとして、ざっと思いつくだけでもドラティー、シャイー、カラヤン、ゲルギエフなど多種のCDを持っている。一番よく聴く演奏はやはりブーレーズかな。今日はそんな彼の講義が聞けるとあってカーネギーに駆けつけたわけだ。ブーレーズご自身の経験や、ストラビンスキー本人から直接聞いた話を織り交ぜながら、1時間あまりを費やした曲の解説はとてもわかりやすく、楽曲の構成や魅力がよく伝わってきた。彼曰く、「春祭の最大の魅力はリズムと音の塊にある」とのこと。私はこの曲のスコア譜をなんども解析したことがあったが、さすがはブレーズ、彼らしい明晰な解析は曲の見通しをよくするし、すくなくとも私には新しい発見がたくさんあった。彼にとって同曲でもっとも驚くべきパートのひとつは第2部の導入部の後半らしい。この部分がそこまで緻密に作られているなんてまったく気がつかなかった。ちなみにブレーズにとっては「この曲のリズムを指揮するのは楽」なんだそうだ。参りました。後半の全曲演奏もすばらしかったのは言うまでもない。印象深い夜になった。
NN The site of action potential initiation in cerebellar Purkinje neurons Beverley A Clark, ... Michael Hausser 今号のNat NeurosciにはHausserラボから二つ出ている。ともに必見。こちらは小脳プルキンエ細胞のスパイクは軸索の途中(最初の枝分かれの場所)から始まるというもの。いえ、まあ、だからどうしたって感じだけど、とりあえずMovie2は面白し、イメージが湧くので見る価値がある。
NN Bistability of cerebellar Purkinje cells modulated by sensory stimulation Yonatan Loewenstein, Se'verine Mahon, Paul Chadderton, Kazuo Kitamura, Haim Sompolinsky, Yosef Yarom & Michael Hausser プルキンエ細胞のUP stateはsingle cell attractorらしい。とりわけ登上線維を介した生理的刺激(Air puff)の実験(図7)は重要。MTさん必読。ちなみに昨年Dmitriyが提示したUP stateのモデル(こちら)はこの論文の図8とほぼ同じ。なにせSompolinskyだからな。
NN Large-scale changes in dendritic structure during reorganization of adult somatosensory cortex Peter W Hickmott & Patricia A Steen
NN Cyclic AMP controls BDNF-induced TrkB phosphorylation and dendritic spine formation in mature hippocampal neurons Yuanyuan Ji, Petti T Pang, Linyin Feng & Bai Lu 必読
NN Coactivation and timing-dependent integration of synaptic potentiation and depression Huai-Xing Wang, Richard C Gerkin, David W Nauen & Guo-Qiang Bi 必読
N Quantitative measures of cluster quality for use in extracellular recordings N. Schmitzer-Torbert, J. Jackson, D. Henze, K. Harris and A.D. Redish
N Synaptic targeting of N -methyl- D -aspartate receptor splice variants is regulated differentially by receptor activity T. Pauly, A. Schlicksupp, R. Neugebauer and J. Kuhse
▼ 今週のF1000: JNB Fate of constitutive endocytic vesicles formed in the growth cone: Transport of vesicles from one growth cone to another in the same neuron. Denburg JL, Hughen RW, Tucker D, Kater SB


1月29日(土)
▼ 昼はRXY君の論文。
▼ 午後深くなってからミッドタウンに。昨日、妻がアレッシィ(ALESSI)のMichael Gravesがデザインした「MGMUG」というマグカップを二つ買ってきたので、同じデザイナーによる他の商品を見に、二軒ほど回った。いくつか良いものを見つけたが結局買わず。
▼ 夕食をSOHOの「イル・コラッロ・トラットリア(Il Corallo Trattoria)」で食べる。
▼ 夜はメトロポリタン歌劇場へ。今日はドビュッシー作曲のオペラ「ペレアスとメリザンド」なんだけど、演奏はレバイン指揮、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Anne Sofie von Otter)、ジョセ・ヴァン・ダム(Jose van Dam) といつも以上に豪華。さらにペレアス役のウィリアム・バーデン(William Burden)やイニョルド役(子役)もうまかった。さて、この曲への私の思い入れは以前書いたとおり(こちら)。マイ・ベスト4大歌劇のひとつ。青白い光を放つこのオペラ、当時の歴史的背景を考えれば、やはり、ドビュッシー最大の偉業に数えてよいと思う。今日はこの曲のもつ神秘性をうまく引き出した演奏&演出にとても満足。


1月30日(日)
▼ 昼はRXY君の論文。
▼ 夜は映画館へ。「アビエイター(THE AVIATOR)」を観る。
▼ 帰宅後は再びRXY君の論文。
▼ 日本で住む場所を決めた。本郷へ通うには地下鉄を一回乗り換えないといけないけど、でも、とても満足している。
▼ メモ ─ Marantz:SA-11S1とDENON:DCD-SA1の比較ページ


1月31日(月)
▼ 暖かい。0℃以上あるみたい。
▼ 午前はポスドク候補のTalk。扁桃体中心核のvasopressinとoxytocinの話し。ストーリーと仮説がとても美しかった。
▼ 昼はChklovskiiのTalk。有名人だけどまだ若い。彼の仕事はどれも面白い(文献リスト)。2年前にSFNで見かけた話題(Nelsonラボとの共同研究)を後半に話していたが、そろそろ論文になるということだろうか。
▼ 午後は実験。今日はうまくいったので夜まで粘る。っていうかなんでうまくいったのか理由がわからなくて気持ち悪い。
▼ 帰宅後はRXY君の論文。
▼ Neuroscience ResearchからMethod論文がAcceptable with minor revisionで返ってきたので、こちらもやらないとな。
▼ 今年6月から『PLoS Computational Biology』が刊行になるみたい。Editorial Boardもなかなかの面子を揃えているので今から楽しみだ。早くもE-mail Alertを組み込んでおく。

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